大発見！　ウチはこんなところです！　家族旅行編｜リアクション

大発見！　ウチはこんなところです！　家族旅行編

　◆第二章「ナンパならお断り、だけど……」

　別の日。今日の天気もさんさんと晴れている。
　三折部朝衣は寝子ヶ浜海岸へと足を向けていた。

　というのも４月に町長秘書になってからずっと働き詰めだったもので、５月になってようやく休みが取ることが出来た。
　そのため普段の仕事着とは真逆の赤いタンクトップにショートパンツ、更にはサンダルというラフな格好で海岸に佇んでいた。
　サーファーガールな彼女の鬱憤を晴らす方法といえば、もちろんサーフィンなのだが……本日の波は穏やかで、乗れるほどの波は無い。
「うーん、残念。風は心地いいけど……」
　潮の香りを運んでくる風は、薄っすらと汗ばんだ身体を冷やしてくれる。これで波があれば、最高のサーフィン日和だっただろう。

「おっ、兄貴、誰かいるぜ！」
　色々と考えていると、エレンが朝衣を見つけ、声をかけてきた。後からやってきた燦斗とエーミールも朝衣を見つけては声をかけてきた。
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか？」
「はあ。なんでしょうか？　あの、ナンパならお断りですよ？」
　先手必勝と言わんばかりに朝衣は男達に向けて注意の言葉。朝衣のその言葉にちょっとばかり、エーミールが心にダメージを受けたとかなんとか。
「いえいえ、私、こういう者でして。あ、こちら２人は私の弟なのでお気になさらず」
「弟さん？　……へえ、マネージャー……」
　燦斗から渡された名刺を受け取った朝衣は、彼から更に情報を受け取る。『大発見！　ウチはこんなところです！』という番組の取材だと知ると、ああ、と思い出す。
　朝衣もチャンネルを変えてたまに見る程度ではあるが、その番組の内容は彼女も面白いと声を上げるほど。取材ということは例の掛け声もあるのだろうか、と燦斗に提案してみると、彼はくるくるとパンフレットを丸めて疑似マイクを作り出す。
「『あなたのオススメ、何処ですか！』……で、いいんですよね？」
「マネージャーさんなのに掛け声を覚えてないの？」
「いやぁ、こういうのは俳優本人がやるものですからね。それで、どこかありますか？」
　燦斗の言葉に朝衣はこの近くにある『エノコロ岬』を提案する。

　エノコロ岬はある種のデートスポットとして有名で、灯台には『猫恋の鐘』という恋人と一緒に鐘を鳴らすと永遠の祝福がもたらされるという場所があったり、片思いの相手と自分の名前をイニシャルで書いた南京錠を柵にかけることで猫神様が縁を結んでくれるという祈りの場所があったり……。
　恋愛成就のスポットとしても有名だが、その岬から眺める風景も素晴らしいと朝衣は念を押しておいた。
「ふむ……男３人で行くのは、ちょっと勇気がいりますねぇ」
「うーん、確かに。でも番組制作の時はどうなるのかしら？」
「あ、そこは女優さんも一緒ですよ。ただ、うちの砕牙は今年は女難の運勢らしいので女性との縁は……」
「ああ……うん、行くときは気をつけてね……？」
　番組進行的に大丈夫なのだろうかと不安になった朝衣。自分の名刺も渡しておいて、ひとまず今日のところはエノコロ岬への道順を教えて、休暇の続きを満喫することに。

「……そういえば、青い洞窟があったりするけど……今って、行けるのかな？」
　彼らと別れてふと、自分が行った岬の下にある洞窟のことを思い出したが、行けるかどうかわからないから提案はやめておこうと思ったりもしたのだった。

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