【星幽塔】第一階層　潮騒に魅せられて｜リアクション

【星幽塔】第一階層　潮騒に魅せられて

「てわけで、像に宿ってる想いみたいなものが、何か妙で」
　豪の説明にユリウェイスは少し考えて、
「なら、この街の中心へ向かいましょう。広場にはこの像が集まっているみたいだから、何か分かるかもしれないわ」
「じゃあ、化け物を倒しながら町の中心へ行くってことで」
　豪はそう言って、フォルカ、ルークにも目配せした。
「入り口から真っすぐに進めば行けると思うけど、道は少し入り組んでいるみたいね」
「それなら大丈夫だ。俺がマッピングするからな」
　豪は辺りを見回し、さっそく落ちていたブレスレットのような金属に触れた。
「どう？」
　ユリウェイスの問いに、豪は頷いた。街の中央へのルートは何となく分かった。思ったより遠そうだが。
「焦っても仕方ないし、慎重に行こうよ」
　フォルカの意見に全員賛成だった。
「いざという時は私が引き付けるわよ」
　ユリウェイスが言って、四人は街の中央へと歩き出した。
　豪はその際にも逃げ惑った住民達が落とした物を幻視の光で持ち主の想いを読み取って状況の把握につとめた。
「持ち物からは戸惑いの気持ちがほとんどだな。いきなり水棲生物が現れて襲ってきたらしい。それに対して住民達は意外だとか驚いたみたいだ」
　ユリウェイスは、眉を寄せた。
「待って、怖いとか怯えているといった感情は？」
「感じられないな」
　ルークも首を傾げる。
「怖くはないけど驚いたってことか？」
「むしろ水棲生物の像から感じるんだよな。怖いって感情がさ」
　と、その時。
　殺気を感じた。はっとして視線を上昇させると、民家の屋根にびっしりと水棲生物達が立っていて、こちらを見ていた。
「皆、そこの路地から中央へ。私が引き付ける」
　ユリウェイスは剣士の光をショートソードに宿らせた。
「分かった」
　豪はフォルカとルークを連れて細い路地へと飛び込む。
　ユリウェイスは辺りを見回し、派手にショートソードを回転させて見せた。青い光に彼らの目が向けられる。
「さぁ、来なさい。」
キーッという耳によろしくない声をあげて、屋根から飛び降りて来る化け物達。飛び掛かってきたそれをソードで切り裂く。
「はあッ」
　すると中から何かが飛び出してきた。内臓かとも思ったが、違う。
「！？」
　灰色のどろっとした液体だ。
　ユリウェイスがとっさにそれを避けると、地面に零れ落ちた。すぐに固まってしまう。
「泥？」
　とにかく、固まると石のようになる液体のようだ。それはどうやら街に点在する像の材質と似ている。
　さらに突っ込んでくる魚が一匹。
ユリウェイスは自分のつけていたブレスレットを外し、思いっきり投げつけた。
「ぎゃッ」
と声をあげて怯むが、すぐに激昂した様子で体当たりをしてくる。
後ろから迫る気配に気づいていたユリウェイスはその場にしゃがむ。その瞬間、激昂した魚の攻撃が背後から迫っていた魚へクリティカルヒット。仲間同士で相打ちだ。すぐに彼らが喧嘩を始めたので、近くの無人の民家へと滑り込む。
「！」
　荒らされた室内。中央に大きな像が立っている。
「これは……」
　像の動いた形跡があった。

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