春のボードゲーム会｜リアクション

春のボードゲーム会

☆煮詰まった時にはゲームを

　休日、寝子高１年の月原想花は煮詰まっていた。
　小説投稿サイトに連載しているファンタジー小説もいい展開が思いつかず、参加しているファンタジー系ＰＢＷも今一つパッとしない。
（部屋でボーっとしても仕方ないよね）
　猫鳴館はこういうときこもっているには向かない。
　紫地にドラゴンを描いたファンタジーっぽいプリントのお気に入りのＴシャツを着て、スリムジーンズをはき、パーカーを着て外に出た。
　シーサイドタウンの本屋で異世界転生ラノベを２冊買った後、キャットロードを歩いていると、「Ze Pet」のボドゲ大会のチラシを受け取った。
「行ってみようかな」

　店内に入ると、店員さんらしいフレンドリーなお姉さんが迎えてくれた。
「いらっしゃい。やりたいゲームはある？」
　たくさんのゲームに見とれながら、想花は言う。
「ぼく、ボードゲームは初めてなんです」
　カードゲームはトレカやトランプなど経験済みだけど、雑誌の付録なんかのすごろくはボードゲームとは言わないだろう。
「それじゃ最初は、これなんかどうかな？　カードを見て、正解のコマを素早くキャッチするゲームよ」
　お兄さんが『ゴーストキャッチ』と書かれたゲームのルールの説明を始めると、子供たちも集まってきた。
「カードの中に『コマの色と同じ色で写っているモノ』があれば、そのコマが正解。でもカードの中に正しい色で写っているモノがなければ、『色も種類も映っていないコマ』をとるの」
「えっ？　えーっと……」
　二つ目の説明にちょっと混乱する想花だが。
「実際にやってみたほうがわかるよ。それじゃ、参加する人」
「はーい！　お姉ちゃん、やろうよ」　　
　子供たちと一緒にプレイすることになった。
　最初に出てきたカードには、緑の本と赤いネズミが描かれていた。
（どっちも色が違う？　ということは）
　考えているうちに子供にコマを取られてしまった。
「早い！　なるほど……」
　子供たちの反応の速さに、一回目はあっさり負けてしまったが、ルールを把握した２回目以降はそこそこ勝てるようになった。

「次は『ニャタン』やりませんか？　開拓もののゲームで、道を伸ばしながら資材を貯めるんです」
「面白そう」
　ニャタンはけっこう難しくて、さっぱり勝てなかった。
「うわ、盗賊にやられた……」
（でも異世界転生ものであった開拓ネタを思い出すなあ。割と楽しいかも）

「カードゲームもあるの？　トランプやってみようかな。わあ、このトランプの絵柄すごい！」
「古今東西の神話や英雄をモチーフにした絵柄なんですよ。それじゃ、ブラックジャックはどうですか？」
　運が良かったのか、ロイヤルストレートフラッシュを出した。
「やったあ！　ぼくの勝ち！」
　いつのまにかすっかりノリノリになっていた。

「あ、将棋もやってるんだ」　
　猫鳴館でなぜか将棋をさせたがる先輩がいる。
　ルールは知っているから付き合うのはいいのだが、弱すぎて話にならないよ、と言われてしまい悔しい。
「少し教えてもらってもいいですか？」
「どうぞどうぞ。初心者？」
「ルールがわかるくらいです」　
「それじゃ駒落ちでやってみようか」
　店員のお兄さんが、守りの固め方を教えてくれた。
「なるほど。覚えられるかなぁ」
「いろんな方法があるから、定跡の本を読んでみるといいかもね」
　そういえば弟の部屋に将棋の本があったな、などと思い出す。
　将棋は想花の勝ちだった。
「なかなか筋がいいよ」
　お兄さんに褒められて、ちょっと嬉しかった。

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