颯爽、夜桜怪盗団！｜リアクション

颯爽、夜桜怪盗団！

●怪盗の格好

　絢と真優理は真白とは逆側から進むことにした。

「今度は桜が悪魔に盗まれた？　寝子島って本当に色々おかしいことが起こるのよね」
「そうだね。……それはいいんだけど」

　絢はまたこんな事態に見舞われたと思いつつ、桜を取り戻すというミッションは引き受けた。だが、自分たちの格好がいまいち腑に落ちなかった。

「なぜレオタード？　怪盗ってこんな格好したっけ？」
「え、レオタードは怪盗の格好でしょ」
「え？」

　まるで漫画みたいだと思う真優理とは対照的な絢。

（あ……でも、バニーガールじゃないのね。てっきり今回もバニーになっちゃうんじゃないかと思ってた）

　とはいえ、レオタードとどちらが良いかと聞かれたら、無言を貫くかもしれない。一方の真優理は軽く体を動かしたり、持っている道具を確認する。

「うん、これは動きやすいからいいかな」
「それは……そうかも」
「それに……絢ちゃんのレオタード姿、なんてセクシーなのよっ！　これってもう反則！　もうたまらないわ」
「えー……」

　従妹の絢が大好きすぎて、残念無念極まりない反応を示す真優理に、絢はドン引きな視線を送っていた。

（私のレオタード姿を見てノックダウンしかけてハァハァするのはやめて欲しい……）

　真優理はなんとか落ち着きを取り戻すと、気を取り直して宝物庫の奥を目指す。いま悪魔が近くにいないことを確かめると、手短に作戦会議と役割分担をする。
　基本の動きは物陰に隠れて、できるだけ悪魔に発見されないようにしながら部屋の奥へと向かう。もしも発見されたときは絢が怪盗ガンで悪魔を倒す。真優理は悪魔の注意を引いて、絢が撃ちやすい状況を作るなどのサポート役にまわる。

　それを確認してから２人は物陰に身を隠す。
　少しずつ進んでいると巡回中の悪魔が展示物を隔てた通路を歩いているのが見えた。その手に持つランタンの灯りで、うっすらと姿が確認できる。背丈が高く、ムチを握っている。２人はどうにか見つからないように息を潜める。

（……）

　沈黙する２人。やがて悪魔が通り過ぎるかと思ったそのとき。ふと絢はバランスを崩して装飾品に触れてしまった。手に引っかかったそれは床に落ちて、カツンと甲高い音をあげた。

（まずい……！）

　真優理は悪魔の注意を引こうと、あえて目立つように飛び出した。悪魔はその姿を見つけると、すぐさまムチを振り下ろす。攻撃はかわしたものの、ムチの当たった床にヒビが入っている。
　だがこれはチャンスでもあった。

（当たれ……！）

　できるだけ冷静に狙いを定めて放った怪盗ガンは悪魔に命中し、気絶させた。息を整える間もなく、すぐに倒した悪魔を物陰に隠す。そうしないと他の悪魔が見つけたら仲間を呼ばれてしまう。２人とも少し休んで、落ち着いたところで再び進みだした。
　その後も何度か悪魔とすれ違いながらも、どうにか一番奥の部屋へと進んだ。そこには一足先に到着していた真白の姿があった。宝珠を無事に回収すると、来た時と同じように慎重に宝物庫を後にした。

　一方、中庭では悪魔たちが宴会を開いていた。
　その様子をアシュリーは観察している。そこに他の３人が合流した。宝珠は中央の台座に安置されていて、囲いも無いのでそのまま盗めそうだ。しかし多くの悪魔が酔っぱらっているとはいえ、さすがに真っ向から行くと目立ってしまう。

　周囲を見ていると、中庭の隅にペットボトルのような容器があった。
　おそらく中身は酒。容器もそれほど大きくないので、おそらく容器を掴んでそのまま呑むのだろう。
　
　アシュリーはそれを手にとると蓋を外す。そして中庭の上空に放り投げる。他の面々もそれに倣って酒を投げた。宙を舞った酒は空から降り注ぐ雨となった。
　悪魔たちは酔った勢いもあって、酒が降って来たと盛り上がっている。
　空に視線が向かっているその隙に、宝珠を取り返すとその場からすぐに去った。

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