魚神様はお祭り大好き！｜リアクション

魚神様はお祭り大好き！

　◆第三章「パレードは続くよ、どこまでも」

　時刻も夕暮れが近くなった頃。
　ぽつぽつと提灯に明かりが付き始め、お祭りらしい雰囲気を漂わせていた。
　そんなお祭り会場の音楽は少しずつ軽快な音楽で埋められ、お魚の着ぐるみを着たスタッフ達がわしゃわしゃと動く。

「パレード！　ぱれぇど！　おさかなパレードの時間だよ！」
　そんなアナウンスと共に辺りがうっすらと暗くなったかと思えば、電球で作られた明るい道が出来上がる。
　その道を着ぐるみ達がペンライトを持って大行進する、というのがおさかなパレードのようだ。
　鯛の着ぐるみを着ている遠海、鰹の着ぐるみを着ている瑞毅も同じようにパレードのスタッフとして参加して、会場にいる人々と魚神様を楽しませていた。

「ママ、おさかなさんがいっぱいー！」
「そうだね、いっぱいいるわねぇ」
　パレードの様子に大興奮の楓と智依子。先程声をかけてくれた鯛のお姉さん―――遠海を見つけると、楓は大きく手を降った。遠海も先程の親子だと気づき、ペンライトをブンブンと降って応える。
　キラキラと煌くペンライトと愛らしい着ぐるみのパレードは、魚神様も大満足。大きな身体を音楽に合わせてゆらゆらと動かしながら、楽しんでいる様子を見せていた。

「あとで猫ちゃん達にも報告しなくちゃね」
　魚神様の楽しそうな雰囲気には美野梨も満足げだ。お持ち帰り用のお刺身や塩焼きなどを購入しながら、魚神様の様子を見ている。
　話に出ていた猫達のお祭りというのも興味があったが、今は目の前のお祭りを楽しむことを優先。後ほど、お刺身をお土産に喋ろうと決意した。

　パレードは４５分ほどで終わり、遠海はようやく解放され……たかと思えば、色々なステージに連れ込まれてスタッフとして働かされている。
　その様子に何かがおかしいと気づいたのか、朝衣が遠海に声をかけた。
「ええと、あなたは……あれ？」
　朝衣は遠海がスタッフではないことに気づき、急いで解放させる。遠海が着ぐるみを脱いだ頃には、既に彼女のお腹はぺこぺこだ。
「はあぁ～……やっと解放されたぁ……」
「ごめんなさい。なんとお詫びをしたら……」
　朝衣のその言葉に、遠海のお腹の音が遮る。とにかく、お腹ペコペコのようだ。
　スタッフと間違えたお詫びにと、朝衣は遠海と一緒にいくつかの露店で食品を購入。食欲魔人たる遠海の食べっぷりには驚きつつも焼き魚を自分も一緒に食べ、お祭りを満喫したのだった。

『ウオガミ、楽しいぞーぃ♪』
　パレードに合わせて歌を歌う魚神様。
　その様子だけでも楽しいというのがわかる。

　しかし夜になっていると気づくと、島の人達に早く寝るように促した。
　何故？　と問われると、魚神様はただ一言だけ返した。

『ひゃくにゃこうが始まるから、としか言えんのぅ……』

　ひゃくにゃこうという聞き慣れない言葉。
　神妙そうな魚神様の顔。

　……魚神様にはまだまだ、何かの謎がありそうだ……。

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