【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間｜リアクション

【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間

　薬師寺亜美佳は正直しんどい。

　今日も昼間からぐだぐだである。
　仕事のあいだはきっちりこなし、プロフェッショナルとして周りからの嘱望も集めている彼女であるが、いったん仕事から離れるとぐだぐだっぷりが加速する。
　
　とくに彼氏がいるわけでもないし、遊びに行くにも友人が捕まらない。どこかに遊びに行く気力もない。
　そんなときは食事は前日の余り物ですまし、一日中ケータイのサービスをぼーっとながめているだけで、気持ちの悪いほど簡単に時間は過ぎていく。
　サブスクの動画と雑誌、それにゲームだけをして一日が過ぎる。
　ベットから半身ずらしただけの休日。

（私みたいなぐだぐだ人間に、ケータイは悪い文化だわ･･････）

　画面から目を離し、机の上の写真立てに目をやる。
　外国の少年少女に囲まれて、日焼けして笑う彼女。
　その横には、この国ではない切手が貼られ、この国ではない宛先から送られた、美しい絵はがき。

　ぐだぐだ人間でも、やるときはやる彼女。
　十代の後半は夢のようにすぎた。
　外国のテレビを見ている内に急に思い立って、海外派遣の協力団体の船に乗っていた。
　たんなるボランティアのつもりだったのだが、外国の現地ではトラブルが頻発、なれない言語を駆使して交渉し、相手と対等にコミュニケートするため文化を学び、子供をまもるため荒々しい危険な行動をすることも辞さなかった。
　爆発的なエネルギーで、外国を渡り歩いた。
　そこで身につけた専門的知識は、しかし悲しいかな、あまりに専門的すぎて、履歴書に書いたところで、理解されることは少なかった。
（こんどの職場は、うまくいくといいけど･･････）

　有事において、万能の力をもつ彼女。
　日常生活において、ぐだぐだな彼女。
　もっか彼女の日常は、サブスクを消化するのに費やされていた。

（これではいかん）

　すこしでも、外に出なければ。
　
　そう思って、表にでて、出くわしたのが奏子と結月が猫と格闘している現場だったのだ。

＊　　＊　　　＊

「あっ･･････えーと」
「あ――危ない！」

　その瞬間、うずたかく積まれたゴミが、ぐらりと揺れる。
　彼方から横倒しになったゴミバケツが、ごろごろと転がる。
　大量の段ボールが、いままさに崩れようとしていた。

「逃げなさい！」
　飛び出す亜美佳。
「でも、でも……猫が！」
　おびえる猫を抱きしめる奏子と、それを必死でかばう結月。
　今まさに――二人にバケツが直撃しようとした、その時！

「「――何？」」

　亜美佳と結月――二人の感覚に、変容が起こった。

　数瞬ののち、ゴミは激しく弾き飛ばされていた。

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