【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間｜リアクション

【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間

「うーん……」

　段ボールの上から転げ落ちてきたのは、ひとりの男の子。
　黒い髪にごみとほこりがからまっている。
　秀麗な顔立ちだが、ごしごしと擦った目元は赤く腫れている。
（キレイな男の子だな……）
　奏子は感嘆して、すぐさま（でも、お姉ちゃんのほうが美人だもんねっ！）とあわててつけくわえる。
「……えっと、君、名前は？」
「え、僕？　神代結月だよ－」ほわわわんとした顔で笑いかける。
「こんなところで、なにしてたの？」
　奏子の質問に、当り前のことを聞くね、と言う顔で、結月は答える。
「おひるねだよ」
「ひ、昼寝！？」
　こんなゴミだらけの場所で？
「そう、ここ意外と、日当たりがよくって、ぽかぽかあったかいんだ」
「……」
「人もさがしにこないし」
「……」
「猫もたくさんいるしで絶好の昼寝ポイントっていうわけさ」
「……そうなの」
「というわけで、一緒にお昼寝をしようよ－」
「は？　なっ、なんで……」
「みんなで寝たほうが楽しいでしょ？　一緒に寝てよ，お願い」
「ちょちょっと、一緒に寝るって、私はお姉ちゃんと……いやそうじゃなくて、その表現は誤解が！」

　神代　結月。
　マイペースの、のんびり少年。
　あらゆる出来事の優先順位に、かならず「睡眠」を置く。
　寝ることの快楽を、すべてにおいて優先する。
　今日も今日とて、彼なりの絶好の睡眠スポットで、十分お昼寝をたのしんでいたところだったのだが……。

「……ん－」
　しばし考えた奏子は、
「そだ！　猫を退治するのを、一緒に手伝ってよ！」
「え？」
　やっぱり、なんだかんだ言って一人だと不安だ。
　救援は、いた方が良い。
「う－ん･･････その猫退治に付き合ってくれたら、一緒にお昼寝してくれる？」
「勿論！　一緒に寝てあげるから！」
　やや誤解を招く表現をする奏子。
「なんだか楽しそうだし、つきあってあげてもいいかな･･････」
「本当？　それだっだらこの先にどぅああああ！！！！」

　その瞬間！
　路地の奥から急に黒い影が飛び出してきた！

　あわてて身を翻す奏子。
　がしゃーん！
　盛大にひっくり返って、ゴミの山に頭から突っ込む。
　すさまじい自爆を、呆然と見守る結月。
「･･････だいじょーぶ？」
「く、くそ･････油断した」
　ゴミの山から体を起こす奏子。

（こうなったら･･････）
（こうなったら、あれを使うしか･･････）

　奏子はウエストポーチに手を突っ込む。
　中から取りだしたのは･･････。

「･･････ジュース？」

「くらえっ！」

　言うが早いか、奏子は素早くカンを一振り。
　不思議な力の感覚が満ちる。
　同時にプルトップが軽快にはじけ飛んで、大量の炭酸が、まるで放水作業か何かのように飛び出す！

　彼女の行使した不思議な力が、ろっこんとよばれるものであり、彼女がその「紅蓮のスプラッシャ－」を駆使して大活躍するのは、また別の話である。

　噴出した炭酸は、猫の逃げ込んだ奥を直撃。
　奇襲に驚いた猫は、そのまま結月の所へ飛び込んでくる。
　思わずキャッチする。

「ナイス」
　
　その時――。

「君たち、いったいこんなとこでなにをして――」

　急に声がかけられた。

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