Re:奴隷戦線異常有り｜リアクション

Re:奴隷戦線異常有り

●●●突撃は高速と共に●●●
「また神魂か！？　いい加減にしろよ！！」

　観客やピエロに奇異の視線を受けながらも、方向を上げる一人の奴隷。
　その奴隷はゴブリンの元へと走り出し、麻布を放り投げる。
　鈍い光が見えたのはぼろぼろの剣であろう、ということが辛うじて分かったものの、誰もいなかった。

　半瞬後に中央にいた2体のゴブリンの頭部が飛び、会場に静寂、次いでゴブリン達の咆哮が支配する。
　倒れたゴブリンの近くに居たのは御剣刀。
　刀は今の状況に酷似した出来事を経験しており、持っていた壊れた剣を捨てる。

「以前よりも場数もこなしている…今の俺の力、たっぷりと味わえ！」

　普段は温厚なフツウの学生である刀。しかし今は数多の経験を蓄積した一人の剣士。
　過去にぼろぼろの剣を振るった時は一撃で壊れたが、今回は二度。
　着実な成長を遂げ、この不本意な邂逅に今の力を発揮する。

「知能は高くない、同士討ちも狙える…こんな風に！」

　ゴブリンの特性も覚えているのだろう、切ったゴブリンの胴体を蹴り飛ばし、同士討ちを誘う。
　狙い通り、胴体がぶつかったゴブリンは錯乱し、隣のゴブリンに攻撃をし始める。

「みたいね。はぁ、ろくでもない展開ね」

　その様子を見て納得した様子でため息をつくのはティオレ・ユリウェイスだ。
　ティオレは手に持ったぼろぼろの槍を巧みに操り、刀の要領を真似て同士討ちを加速させる。
　狙われたゴブリンの中でもティオレに反撃する個体も出てくる。

「力任せ…こういうタイプは代り映えしないわね」

　ゴブリンのこん棒が地面を揺らし、退屈そうに、それでいて油断なくティオレは回し蹴りを見舞う。
　煩わしそうに叫ぶゴブリンの視線の先には誰もおらず、怒りの向け先を他のゴブリンに向ける。
　同士討ちを成功させたティオレは過去に冒険稼業を経験しており、盗賊としての腕前は相当だ。
　そして、

（何しろ不老不死の呪いをかけられてるから、やられたところでどうってことはない）

　ほしびとであるが故のろっこんではない、寝子島のフツウでもない、特異な体質。
　仮に一人で戦ったとしてもその力と体質で敗北する可能性は薄い状態にあった。
　しかし、一人ではなく、事情通の剣士とたまに見かける学生服を着た女学生が二人。

「だ、大丈夫なの？　琴代ちゃん、痛くないの…？」
「もちろん！　のんのんちゃんこそ、下がってていいんだよ？」

　女学生二人、琴代と天子は4体のゴブリンを相手にしているが、その様はお世辞にもよいとは言えない。
　特に天子は傍目にも分かるほどただの人間だ。
　チィ、と内心で舌打ちをしてティオレは二人の援護に向かう。

　思うように戦闘が運ばない観客からはヒソヒソと不満の声が上がり始める。
　焦る様子のピエロが何事か言っているが、拡散されることなく戦況は変わっていく。

このページにイラストを設定する