大蝦蟇さまの寝子島名酒紀行｜リアクション

大蝦蟇さまの寝子島名酒紀行

●現代の遊び

「でかいカエルだなあ、こんなのがいたら寝子島がカエル島になっちゃうじゃん」

　白石龍樹は大蝦蟇の姿をみて、そんな感想を口にした。

「敵じゃないならいいけど、酔っぱらってるのか？」

　彼は『酒』と書かれたヒョウタンを腰に引っ掛けている。しかしそれをあおっても、何も落ちてこない。

「酒！　酒は無いか！　芸でもいいぞ！」
「芸って……遊びたいってことか？　それなら……」

　龍樹はある考えのもと、大蝦蟇のところへ駆け寄った。　

「なんだ、小僧」
「お前、遊びたいんだろ？　それなら面白いのがあるぜ！」

　そういって龍樹は携帯ゲーム機を取り出した。

「それはなんだ？」
「ゲーム機だよ」
「ゲーム機？」

　大蝦蟇は龍樹の手にある機械を不思議そうに眺めている。
　電源を入れると、液晶が灯り、ゲームのスタート画面が表示された。
　龍樹がステージを選択し、敵のいるマップに赤く光った主人公が降り立つ。

「これは何をしているのだ？」
「このキャラを動かしてステージを進めるんだ」

　話しながら龍樹は方向キーとボタンを操作して敵を倒していく。
　敵との相性を見ながら、主人公の色を青や黄色、緑に切り替える。

「これは自分の色で敵を攻撃するんだよ」
「ほう」

　ステージの色も相まって、画面全体がカラフルに映る。
　その画面を大蝦蟇はじっと見つめている。
　
「やってみる？」

　ゲーム機を大蝦蟇に差し出すと、彼はそれを受け取った。
　方向キーで前進・後退、左右への移動。複数のボタンで攻撃・防御・色の変更など。

　それらを龍樹が説明したものの、なかなかうまくいかない。
　しかしだんだん慣れてくると、それなりに動くことができるようになった。
　そして四苦八苦しながらもステージをクリアした。

「ふぅ……なかなか面白かったぞ小僧」
「それはよかった。他にもあるぜ」　

　今のゲームを一旦閉じて、この中に入っているゲーム一覧へと画面を切り替える。

「おっちゃん、可愛い女の子は好きか？　カエルの女の子のほうがいい？　女の子が戦うゲームとかあるぜ。それとも恋愛ゲームのほうがいいかな？」

　龍樹はゲーム一覧を眺めながら大蝦蟇にやりたいゲームを尋ねる。

（体動かす系は暴れられると面倒だから止めとくか……）

　そんなことを考えながら画面をスライドさせる。そのとき、大蝦蟇が問いかけた。

「色で戦う遊び以外にもあるのか？」
「あるぜ。このなかに他にもいろんなゲームが入ってるんだ」
「ほう」

　それを聞いて、興味深そうに龍樹と一緒に画面をのぞき込む。
　大蝦蟇が普段暮らしている天界では触れることのない面白さが、そこにはあった。

　女の子が空を舞って敵と攻防を繰り広げたり、動物の生活する街でカエルの女の子と仲良くなったり。
　大蝦蟇はゲーム機の操作にもすっかり慣れてきて、様々なゲームを遊んだ。

「おお。ずいぶん時間が経っておる」
「あ、ほんとだ」

　どうやら結構な時間をゲームで過ごしたようだ。
　大蝦蟇は立ち上がって、身なりを軽く整える。

「小僧よ、なかなか楽しかったぞ」
「俺も楽しかったぜ」

　龍樹はまるで友達と遊び終わったような雰囲気で大蝦蟇に言った。
　そして大蝦蟇はどこかへ歩いていった。

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