猫☆カレー博！｜リアクション

猫☆カレー博！

「さーて、どこのカレーから食べるかなー？　やっぱ故郷北海道のザンギカレーか、それともゴージャスに三重松坂牛カレーか、変わり種で沖縄の海ブドウカレーも気になる……くっ…悩む！　こんだけ数があると流石に全種類制覇は胃の容量的に厳しい！」
　流が看板を吟味しながら歩いていると、寝子島の観光大使であるマンボウくんが、なんとなくカレーまんっぽいコスプレでよちよち歩いている。

「食べたいカレーがあればお店まで案内するよ～」
　
　もうこの際、マンボウくんにオススメを聞くか？　などと思った瞬間、まあるいマンボウくんのフォルムの向こうに『広島の牡蠣カレー』と書かれた看板が目に入った。
「牡蠣かぁ、そういやしばらく牡蠣ご無沙汰だよなぁ……」
　流の胃袋がビビビと直感を伝えてくる。最初は牡蠣カレーに決めた！
「ふっふっふ、こういうのも一つのめぐりあわせってやつだよな。すいませーん、牡蠣カレー一つくださーい！」
　手渡されたカレーはキラキラと輝いて見えた。
　海のミルクと呼ばれる牡蠣が惜しげもなくルーの海に浮かんでいる。
「いただきまーす！」
　その途端、流はくわっと目を瞠った。
「ん！　牡蠣ぷりっぷり！　海のエキスがじゅわーっと口の中に広がる！　カレーとの相性もばっちりだな！　こいつは大当たりだ！」

　飛鳥も香川のＵＤＯＮカレーをぺろりと平らげ、次なるカレーを求め歩いている。
「走ってきたせいもあるけど、一杯軽く食べてしまった……猫☆カレー博、恐るべし」
　でもなあ、である。
　さっき食べたＵＤＯＮカレーは、美味かったが、自分が求めていたカレーではなかった気がする。何かが違うのだ。お腹さん、いったいどんなカレーが食べたいの、と飛鳥はお腹を擦ってみる。するとピッカリ、電球マークつきで答えが返って来た。
「そうそう！　随分前に食べた『みかんカレー』、ないかな！」
　みかんとカレーの組みあ合わせとな？　と怪訝に思う気持ちはわかる。
　しかし昨今、ご当地カレーは何にでも挑戦しているのだ。
　桃カレーや苺カレー、洋梨カレーに夕張メロンカレーなどもある時代だ。
　飛鳥の脳裏に浮かんでいるのは子どもの頃に食べた「どろり濃厚みかんカレー」。
　しかし飛鳥ははた、と立ち止まる。
「あれ？　みかんの産地が多すぎて、どこの名産カレーか分からないや」
　愛媛か？　和歌山か？
　悩んだ末に、愛媛に突撃する。果たしてみかんカレーは……。
「あった」
　ルーの中に浮かんでいるのはオレンジ色のみかんの房。具はそれだけだ。
「そうそう、このシンプルさだよ！　でも、子どもの頃に食べたものの方がもっとドロッとしてたかなー」
　記憶とは若干違ったけれど、甘みと酸味が辛さを引き立て、これはこれで美味しい。
「あ。和歌山のブースにはレトルトの『みかんカレー』が売ってる。こっちはお土産に買って行こうかな」

　修とあおいはまず北海道の『ザンギカレー』に挑戦していた。
　ザンギとはいわゆる鳥の唐揚げである。唐揚げとザンギの違いは、北海道民に聞いてもはっきりした答えは帰ってこない。違いはよく分からないが、北海道民は唐揚げよりザンギが好きだ。
　修は野菜増しでスープカレー仕立てのものを購入し、あおいとシェアして食べた。
「北海道といえばスープカレー。美味いなぁ」
「これは鉄板だね！」
　続いて挑戦したのは、山形の『サクランボカレー』。
「一寸冒険だったけど……付け合わせにレーズンが付く感じに近いかも。意外と食べられる」
　続いて、あおいが選んだのは三重の『松阪牛カレー』。
　サクランボカレーが冒険だったので、今度は絶対間違いない、かつ、一度は食べてみたいチョイス。
「思ったより肉が大きくてゴロゴロしてる～」
　もうひとつ行けるかな、と最後は珍しそうな沖縄の『新食感海ぶどうカレー』。
「プチプチ触感が面白いね」
　そんなふうに味の感想をワイワイ話して。
　あ、と気づいて、あおいの頬にさり気なく触れる。
「え、何？」
「ほっぺにカレーがついてるよ」
　するとあおいはぷっと吹き出し、修君も、と頬を指さす。
「え？　俺も？」
　参ったなあ。でもこんなの楽しい。

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