菓子無きディストピア｜リアクション

菓子無きディストピア

白石龍樹は道路の反対側に、武装警官に囲まれている子供たちを見つけた。
「あっ」
　やはり、チョコレートやポテトチップを取り上げている。
「子供からお菓子を取り上げるなんて、ゆるせない！」
最近、武装警察の活動が活発だ。ここらへんで立ち上がるべきかもしれない。というのも、龍樹はチョコレートのお菓子パワーの恩恵を受けられるのだ。身体能力が強化されるなど、小学生とは思えない攻撃力を得ることができる。
「母ちゃん、母ちゃんが好きなパッキー、また食べさせてやるからな！」
　ポケットに忍ばせていたニャープルメガネチョコに触れて、武装警察の倉庫があるという九夜山へ向かうことにした。

　倉庫入り口。広場のようになっているそこの空間に、遠海は他の武装警官と共に集まっていた。緊急招集だ。黒崎から何か話があるらしい。
「黒崎総裁に敬礼」
洗練された動きで敬礼をする。武装警察の前に立ったのは黒崎だ。
「今日も禁止の法令をしっかり守らせて、お菓子は全て没収だ」
「は！」
　それから、お菓子禁止についてのありがたい言葉を聞き、解散となった。武装警察の仕事はこの後からである。
「楡宮班、午後の担当はチョコレートエリアだ」
　上司から持ち場を指定され、早速向かう。町に出てお菓子禁止を破っている一般市民がいないか見回りするのが主な仕事であるため、倉庫の見張りはそこまで多くない。チョコレートエリアは遠海合わせて三人で守ることになった。
（三人ね）
　チョコレート菓子は匂いが強いので、こっそり持ち出すのが難しいのだ。久々に食べられるかもしれない。そう考えると心が躍る。
「そういえば、知ってますか？　楡宮班長」
「何？」
「黒崎総裁ですよ。没収したお菓子は、黒崎総裁が食べていて、しかも政治家に横流ししているとか」
　噂が回るのは早いものだ。先日遠海が流し始めたその話は徐々に広まりつつあるようだ。まずは部下達の不安を煽る。
「その話もやばいけど、お菓子の戦士が増えて来てますよね。ほら、お菓子を食べると超能力みたいなのが使える奴ら。三班の奴らが返り討ちにあったらしいっすよ」

　蛇那伊が武装警官達に近づくと、彼らが会話を始めた。
「あ、おい食べるなよ。禁止だろ？」
「へへ、本当にお菓子かどうか味見だよ」
　蛇那伊はその様子にため息を吐いた。
「黒崎先生ったらおかし禁止じゃなくて一人じめしてるのかしら」
　やがて巨大倉庫に到着した。監視カメラがついた入り口から堂々と侵入するより、裏口に回った方が良さそうだ。
「これくらいの高さなら飛べそうね」
　塀は二メートル以上あるが、お菓子パワーをうまく使えば容易だろう。

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