大悪魔とイチゴ狩り｜リアクション

大悪魔とイチゴ狩り

●決着

　ヨルヒエルとサキリたちの戦いは続いていた。
　本当に攻撃が効いているのか不安になるほどだった。　
　そんな雰囲気のなか、サキリの一閃がヨルヒエルの片翼を切り裂いた。
　少しだけ光が差した気がしたが、それでも悪魔は表情を崩さない。

「まさか翼を切り落とすとはな。なかなか楽しいぞ」
「よくそれで飛べるものだ」
「片方失った程度で落ちるほど低級ではないのでな」

　ようやく差した光が閉ざされるような感覚。
　蒼、豪もかなり消耗していて、肩で必死に息をしている。
　どうすればいいのか。そのとき、戦場に声が響いた。

「砕けろ！」

　修は岩陰から叫んだ。
　直後、ろっこん『分解』が悪魔のカンテラに作用して、その形が崩れていく。
　しかしまだ青い炎は残っており、地面に向かって落ちていく。

　サキリがすかさずイチゴ盾の陰に隠し持っていた『消火器』を炎目掛けて投げつける。
　それを阻止しようとヨルヒエルが動くところに豪が飛び出した。

「おおおおお！！」

　盾を構えて突進すると、そのままヨルヒエルにぶつかった。
　威力は無いが、隙を作るには十分だった。
　注意が削がれた間に、修がもう片方の翼を撃ち落とした。　

　破裂した消火器から消火液が飛び散る。
　その周囲が白い煙に覆われて、やがて少しずつ晴れてくるとカンテラの底部に残された炎は消えていた。

「やった……！」

　展開の速さに頭が追い付くと、一同は勝利を確信した。
　ヨルヒエルは分解されたカンテラを一瞥すると、蒼たちのほうを見た。　

「今回は私の負けを認めてやろう。さらばだ、ネコジマの諸君」

　次の瞬間、強い風が巻き起こり、砂埃がたちこめる。
　とっさに全員目を閉じて、腕で顔を覆った。
　目を開けると、もうヨルヒエルの姿はなかった。
　しかしイチゴ化していた島が戻っていく様子に、危機が去ったのだと実感する。
　皆が安堵の表情を浮かべる。

　サキリはどことも知れず、空を見上げた。

（あくまで『フツウ』を守るのが目的だけど、強敵との戦いは楽しいね)

　その後、鸞先生に夢の出来事だったんですよとフォローを入れたり
　熊吉先生にお礼を言ったりと、一同がそれぞれの行動をとった。
　やがてイチゴ化していたものは全て元に戻り、『フツウ』は守られた。

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