大悪魔とイチゴ狩り｜リアクション

大悪魔とイチゴ狩り

●元凶

　はじめに元凶――ヨルヒエルと対峙したのはサキリだった。
　修とは途中で別行動となり、先に駆け付けた。

　ヨルヒエルはサキリの登場に動じることはなかった。
　背中には翼が生えており、鋭い爪に長い尾を持っている。
　彼は両腕と両翼をひろげて、こう言った。

「私のところへやってきたか。それは評価しよう」

　にやりと笑った口元から牙が見えた。
　そこに豪、蒼、紫も到着して多勢となった。
　しかし複数人に囲まれているとは思えない余裕と威厳があった。
　そして、その腰には青い炎を灯したカンテラを提げている。
　あれをどうにかすれば、この事態は収まるはずだ。

「君たちの狙いはこれだろう？　少しは楽しませてくれよ」

　そう言った直後、ヨルヒエルは翼を大きく広げて皆のもとへ飛んできた。
　サキリはその動きに合わせるように踏み出すと、イチゴ剣とイチゴ盾を構える。
　ヨルヒエルの振り下ろした爪を盾で防ぐ。その重さに腕が少ししびれている。

「ぐっ……！」
「よく見ているじゃないか」

　続けて悪魔は第二撃を繰り出そうと、もう片方の腕を振り上げる。
　そこに蒼が突っ込み、剣を突き立てようと試みる。
　しかし空中で体を大きくひねることで、爪の軌道を変えてその剣を弾き飛ばす。

「嘘……」

　予想外の動きに一瞬固まる蒼。
　その意識が戻ったのは紫の後方射撃だった。

　少しでも気を抜けば、こちらがやられかねない。
　わずかな時間にもかかわらず、そう感じさせるには十分な迫力だった。

　サキリの基本戦術は遠距離からピンクの剣閃を放ち、牽制攻撃を仕掛けること。
　『斬空赤刃』で空中にいる敵の死角に転移し、赤光化させた刃で切りつける。
　そして即座に地上へ高速連続転移する。
　狙いをカンテラに見せかけつつ、翼を傷つけることで飛行能力を削るフェイントも織り交ぜる。

　最前線ではサキリが、やや後ろでは蒼と豪が戦闘している。
　その後方では紫がスナイパーライフルを構えて援護していた。

　そのころ、修は車の一部にろっこん『分解』を発動していた。
　それを操作してまだイチゴ化していないガソリンスタンドに突っ込ませる。
　激しい爆発とともに煙が立ち込め、その中に紛れるように物陰に隠れる。

（おそらく鸞先生はイチゴの影響が大きい星ヶ丘のどこかにいるはず）

　そう考えた修は、襲い掛かるイチゴ人間たちをバットで応戦しながら捜索を始める。
　あてもなく闇雲に探し続け、どうにか鸞先生を発見した。気を失っているだけで、怪我などはしていない。
　それほど大きな建物ではなく、内装の様子からおそらく喫茶店の類だろう。

「ともかく先生の安全は確保できた。あとは、悪魔を倒すだけだ」

　修は小屋を出ると、元凶のもとへ向かった。

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