みんなでつくろう！いろんな授業！｜リアクション

みんなでつくろう！いろんな授業！

●アウトドアの醍醐味

　龍目豪は掲示板に貼られた『みんなでつくろう！　いろんな授業！』というイベントの告知を見つけた。

「誰でも先生になれる、か……」

　全部とはいかないがキャンプの楽しさを伝えられればいいなと思い、教材づくりに励む。実習も取り入れようと内容を絞り、また白沢絢子先生に協力してもらうことにした。

　当日。大まかな流れを書いた紙を生徒たちに渡す。
　そこには火おこしと飯盒炊爨の方法、キャンプの持ち物やその荷造り、服装や歩き方など授業で扱う項目がざっくりと書かれている。
　授業の初めは座学を行うため、教室の１つを借りる。来ている生徒は中学生が多い印象だった。

「今日は来てくれてありがとう。今日はキャンプの楽しさが伝わったら嬉しい」

　そう宣言すると、授業を始める。

「キャンプの行き先は山が多いと思う。でも山は天気が変わりやすい。さっきまで晴れていたのに、いきなり雨が降るなんて珍しくない」

　豪は自分の持っている道具を見せながら説明する。

「だから傘だけでなく、こういうレインコートや防寒具は必須だ。また、日帰りでも遅くなることを考えて懐中電灯も持っていく」

　そう話しながら懐中電灯を取り出すと、電池入れの蓋を外した。

「消耗を防ぐため電池を逆向きに入れておく。替え電池も欲しい。もしものときに、明かりを失うのは危険だ。夜は暗いものだが、山のなかだとさらに暗い」

　黒板にチョークを走らせながら、なぜ危険なのか。
　その危険をどう回避すればいいか。もしその状況に陥ったらどうすればいいか。そういったことを丁寧に説明する。他にも色々解説した。
　壊れやすい素材は、丸めた軍手の中に突っ込むこと。マッチは湿気らないよう、アルミホイルとビニールに包むこと。ケガ防止に服装は長袖長ズボン、帽子で臨むこと。

「それから山道を歩く時、端っこは歩かない、崩れるかもしれないからな。あと集団で登るときは、体力がない人に合わせるのが基本。決して無理はしないこと」

　豪は野外活動に積極的であり、言葉に込められた説得力も大きい。生徒たちはその話を熱心に聞いている。

「……と、いったところだ。座学はここまでにして、実際にやってみよう」

　そこから場所を変えて飯盒炊爨の実習を行う。
　これは校舎内で行えないので、外に出て、安全に行える場所へ移動する。あらかじめ絢子先生と話し合って決めた場所で、授業で使うために色々なものがセットされている。

「白沢先生、よろしくお願いします」

　豪が絢子先生にそういうと、先生は笑顔で応えた。まずは飯盒に研いだ米を用意する。

「飯盒は使う前に外側に溶かしたクレンザーを塗っておくんだ。そうすると汚れが落ちやすくなる」

　入れる水の測り方などを説明しながら、飯盒の準備は完了。
　次は火を用意するために、三方向をブロックで覆った場所に薪を組み、火をつける。その工夫の説明も忘れない。

「そしたらこの火で飯を炊いてみよう」

　棒に飯盒の取っ手を通すと、火の位置に気を付けて飯盒をセットする。
　生徒たちも真似するように挑戦する。

　ご飯が炊けるまでの間にサラダを作る。
　あくまで簡単に作れることを念頭に置いたシンプルなもの。
　それでもウインナーとポテトチップを入れると、見た目や雰囲気がだいぶ変わる。

「そろそろ炊けたかな……よし！　いい感じだ！」

　飯盒を火から外し、炊けた白米を器に盛る。そこにサラダを添えたら食事のできあがり。
　本物のキャンプではないけれど、皆楽しそうに飯盒で炊いたご飯を食べている。

　その様子を見て、豪は伝えたかったものが伝わったような気がした。

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