みんなでつくろう！いろんな授業！｜リアクション

みんなでつくろう！いろんな授業！

●料理を楽しく

　鴻上彰尋は寝子島高校の家庭科室でイベントの準備をしている。『みんなでつくろう！　いろんな授業！』と題されたイベントは、誰でも先生として、授業を行うことができるというもの。彰尋は料理を教えようと考え『料理教室　～お弁当に使えるメニュー～』という授業タイトルにした。

　授業が始まる頃には結構な人数が集まった。そのなかには野々ののこや七夜あおいの姿もある。調理スペースの都合で３、４人のグループに分かれてコンロなどの設備を使うことにした。

「ええと……では、料理教室を始めます。よろしくお願いします」

　よろしくお願いします、という声が家庭科室に響く。

「メニューは卵焼きとひじきの煮物、あと鰹節のふりかけです」

　ホワイトボードに今日の予定を書き込んでいく。それらの分量を書き、調理工程をざっくりとまとめる。

「卵焼きは定番だけど、甘いのとしょっぱいので好みがあると思うので、それぞれを作ってみましょう。混ぜるときにマヨネーズを加えると冷めてもふんわりしているのでお勧めです」

　卵をボウルに割り入れて、手早く混ぜていく。作り方はごく普通だが、とても手際がよく鮮やかだ。

「次にひじきの煮物はひじき・人参・油揚げの他に、今回はインゲン・大豆を加えて作ります」

　人参は５センチほどの長さで、少し太めの千切り。油揚げは細めの短冊に切る。いんげんは下処理をしたものを茹でておき、大豆は水煮のパックを使う。
　鍋にサラダ油を入れて弱めの中火にかけ、熱くなったら人参をさっと炒める。その後、水気を切ったひじきも入れる。

「こんな感じになってきたら、大豆といんげんを加えます」

　鍋の中身を見せて、調理の状態を分かりやすく伝える。そこへ醤油、砂糖、みりん、かつおだしを入れて水気が無くなるまで煮る。

「これはご飯と混ぜ合わせておにぎりにしても美味しいです」

　生徒たちはメモを取りながら、なるほどといった様子で頷く。

「最後は鰹節で作るふりかけです。煮物のだしに使った鰹節を乾燥させておいたので、これを使います。これを炒って細かくしたら、調味料と擦った白ごまを和えます」

　彰尋は慣れて手つきでぱっぱと作業を進める。

「甘辛いのが好みなら一味を加えます。昆布だしをとる家庭なら細かく刻んで合わせても美味しいです。保存も効くから作り置きもできます。説明は以上です」

　彰尋は『全部作る必要はなく、興味があるものやこれなら作れると思ったものに挑戦してください』と付け加えた。
　各スペースを見回ってみると、ののことあおいのところがやけに賑やかだった。それと同時に不安になった。
　彰尋は近づくと、あおいたちをサポートする。

「あおいさん。フライパンはこう持つといいよ」
「なるほど！　ありがとう！」

　フライパンの持ちかたや、卵を焦げ付かないように焼くコツなどを話しながら丁寧に教える。あおいは一生懸命聞いて実践しようとするので、彰尋もちゃんと教えようと工夫する。
　ののこは楽しさのあまり、調理が感覚的になっていたので、一緒に手順などを改めて確認した。
　各グループの調理が終わる頃を見計らって、あらかじめ炊いていたご飯を器に盛る。

「ではせっかくなので、皆さんで作ったものをいただきましょう」

　皆で感想を言いあいながら、楽しい時間が過ぎていく。食器や調理器具を洗って、元の場所に戻す。家庭科室を後にする人々は、みんな彰尋にお礼を言いながら去っていった。

（今日のメニュー、使ってくれたら嬉しいな）

　そう思いながら、彰尋も家庭科室を後にした。

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