寝子島シーサイドアウトレット　冬のクリアランスセール！｜リアクション

寝子島シーサイドアウトレット　冬のクリアランスセール！

（やっぱり……結構、混んでる……）

　恵御納夏朝は寝子島シーサイドアウトレットを埋め尽くす勢いの人混みを見て、少しだけ憂鬱な気分になってしまう。夏朝は人混みというものがあまり得意ではないのだ。目的がある為、覚悟はしてきたとは言え覚悟していれば平気というものではない。

「とりあえず、行こう」

　人と人の間を縫うようにして歩んでいく夏朝。独特な空気の中、頭が少しくらくらするけれどそれでも何とか前へと進む。押しのけるようにして進めばもう少し楽なのかもしれないが、そこまではしたくないと思っているのだ。
　本日の目的の一つはキャットスターという店だ。猫マークの入った良質な運動用シューズが目当てなのだが、もし他にも良さそうな靴があれば一、二足程ゲットするつもりでいた。

「ふぅ……。本当に、多い……」

　溜息を吐いてそれでも何が変わるわけでもなく夏朝は人混みの中を歩く。店についたら多少はマシになるかと思ったが、生憎とキャットスターもまた中々の混み具合だ。
　人混み特有の独特の空気に少しだけくらくらしてしまうが、それでも他人を押しのけてしまうような事がないように注意はしている。
　人混みが苦手とは言え流石にそのような行為はしたくはないのが夏朝の本音だ。

　買い物を済ませた頃にはすっかり息切れ状態で肩で息をするようになっていたが、まだ帰るわけにはいかなかった。何故ならまだ行く場所がもう一つあるからだ。
　もう一つの目的地はネコスケ。そこで良さそうな服を何着か買う予定だった。

（良い服が残っているかは少し不安だけど……）

　後回しにした分だけ商品は売れてしまっている事だろう。夏朝は自分が良いと思う服がまだ残っている事を祈ってネコスケへと向かった。

「お、お買い物終わった……終わった……」

　ふらふらとしながらも何とかコインロッカーへと戦利品を一時預ける事に成功した夏朝。
　この後は特に予定はないが、何はともあれ休憩と栄養補給をしなければ満足に歩く事も難しそうだ。

「うーん……お昼どうしようかなぁ」

　チラリと見えるフードコートにて何を食べるか悩む夏朝。様々な匂いが夏朝を魅了しようと押し寄せてきて、それが余計に悩む要因となっていた。
　そうして暫く悩んだ結果、二つの店にまで絞る事ができたが、そこからが長い。

「お魚とオムライス……どちらにしよう？」

　お魚の方はハングリーキャットという焼き魚レストラン、オムライスはオムライスをメインに出している洋食屋。
　どちらもとても美味しそうで甲乙つけがたし。うろうろぐるぐると歩き回りながら悩んで悩んで、最終的にオムライスを食べる事に決める。

　出来上がったケチャップのかかったオムライスとお茶をトレーに載せて、空いてる席に座った夏朝はスプーンでとろとろのオムライスを掬い口へと運ぶ。
　広がるケチャップとふんわりとした卵の味に満足そうに頷いてゆっくりと食べて行く。
　そして食べ終わってお皿とトレーを戻す際に不意にクレープ屋が目に入ってしまった。

「……どうしよう？」

　クレープを食べるか否か。この問題に夏朝は再び悩む事になるわけだが、結果どうしたのかは十分後の彼女にしか分からないのである。

このページにイラストを設定する