シーサイドイルミネーションパレード！｜リアクション

シーサイドイルミネーションパレード！

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　クリスマスが終わって、しばらくが過ぎたその日。
　鴻上彰尋は弟の将尋と妹の千里を連れ、シーサイドタウンの駅前広場を訪れていた。
　お目当ては、イルミネーションの一番の目玉――ゆるキャラたちが乗ったオープンバスだ。　
　飛び出し防止の安全バーにしがみつく勢いで、幼い二人はバスを待っている。
　そんな様子を微笑ましく見つめながら、彰尋は連続モードでデジカメのシャッターを切った。
（よし、うまく撮れてるのがある）
　撮影は、去年の正月ごろから練習を始めた。
　まだあまり得意じゃないけど、弟妹の思い出を少しでも形に残してあげられたら、と思う。
　下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。多少の不得手は回数でカバーしていこう。
　もう何枚か、と再びカメラのファインダーを覗く。その時、バスの順路の方からわっと声があがった。
　ファインダー越しの弟妹もはしゃいだ声をあげ、視線が向こうに釘付けに。
　デジカメのレンズをそっちへ向ければ、キラキラと輝く光の洪水がやってくるのが見えた。
　イルミネーションに彩られた広場を、光輝くオープンバスが訪れる。
「ほら、サンマさんたちが手を振ってくれてる」
　オープンバスの上からアメ玉を撒きながら、皆に手を振るゆるキャラたち。
　大はしゃぎで手を振り返す将尋と千里。その時間を、彰尋は連射モードを使って切り取っていく。
　シャッターを切りながら、彰尋は思う。二人が楽しそうで本当によかった、と。
　彼自身は幼いころ、ほとんど両親に構ってもらえなかった。そのこともあり、思い出や写真をあまり残してこれていない。
　でも二人には、自分と同じような寂しい思いをしてほしくない。寂しい気持ちにさせたくない。
　だから今日のようなイベントには連れていってあげたし、良い思い出を作って、残してあげられたらと思う。

　やがて、アメ玉を残してパレードは過ぎていった。
　もう少しまわってから帰ろうかと、彰尋は二人を連れて出店の方へと向かうことにした。
　そうして通りがかったのは、木工芸品のおもちゃやインテリアを扱う出店。
　弟妹の二人がおもちゃに足を止め、彰尋も一緒に少し見てまわる。
　そしてそこで見かけたのは、ツインテールの後ろ姿。
「七夜さん？」
　彰尋が声をかければ、二本の尻尾を揺らして七夜あおいが振り返る。
「彰尋くん？　こんばんは、偶然だね！」
「こんばんは。あおいさんもパレード見に？」
「うん！　パレードキレイだったから、つい何回も見に来ちゃって」
　ちら、と将尋と千里を見やるあおい。
「彰尋くんは、弟さんと妹さんと？」
「そうなんだ。さっきは二人とも大はしゃぎで、連れてこれてよかったよ」
　そんな他愛のない話をしながら、二人は出店のなかを軽く見てまわる。
「ねえねえ彰尋くん、これ可愛くない？」
　あおいがふと目に留めたのは、雪だるまを模した木製の人形だった。中にはオルゴールでも入っているのか、心地よい音色を響かせている。
　他にも同じような人形はいくつかあって、あおいは楽しそうに視線を行き来させる。
　そんな彼女が可愛くて、彰尋の口元には自然と笑みが浮かんでいた。
　ささやかな、けれど確かに楽しくて大事な時間。
　弟妹たちにそうしてやるように、自分もこうして思い出を積み重ねていけたら。そしてできれば、それを形に残せたら。
　そう思えたから、だろうか。
「あおいさん」
「どうしたの？」
　デジカメを見せるように持つ。言葉は、すんなりとこぼれてきた。
「もしよかったら、被写体になってくれる？」
「可愛くとってね？」
　ツインテールを揺らして笑うあおいの姿に、彰尋は思う。
　自分にも、そして彼女にも。よい思い出を残すことができたらな、と。

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