メロディーに乗って♪　スキー・スノボ教室！｜リアクション

メロディーに乗って♪　スキー・スノボ教室！

♪バスの中で

　６年生の佐藤瀬莉は、スキー場へ向かうバスの中でわくわくしていた。
　席は２年生の二宮風太の隣だった。
「あたしスキーに行くのは今回が初めてなんだ。いままで機会がなかったから楽しみ」
　瀬莉が話しかけると、
「ボクもはじめて！　うまくできるかなあ」　
　風太も楽しみのようだが、ちよっと不安そうな表情を見せる。
　そこで引率の先生がマイクを持った。
「みなさんこんにちは～！　これからゲームを始めますよ～。まずは縦の列で『ジェスチャーゲーム』をします」　
「あ、楽しそう」
　風太は張り切っているようだ。
　前の席のお姉さんから伝えられたジェスチャーを、後ろの女の子へ回す。
　風太のほうを見ると、伝え終わってから自信がなさそうに首をひねっている。
「それでは一番後ろの人に答えを発表してもらいます」
　結果、瀬莉の列は正解。しかし風太の列は間違ってしまっていた。
「つ、次はがんばる」
　しかし次も、風太の列だけうまくいかなくて……
　どうも風太のジェスチャーが原因だったようで、風太の表情が固まっている。
「はい、それでは次は、『あとだしじゃんけん』のゲームをします。皆さんは私とじゃんけんをしますが、私が手を出したらすぐに、私に負ける手を出してください。途中で手を変えちゃだめですよ？　ちゃんと負けられた人が勝ち残りです」
「えー？」
　不安そうな風太。
　瀬莉はじゃんけんが弱いのだが。
（もしかしてこれならいけるかも？）
　逆に有利になるかもしれない、と思う。
「では、じゃん……けん……ぽん！」　
　先生の出した手はパー。
「やった！」
　グーを出した瀬莉は喜んだが、隣で風太はチョキを出していた。
「あー……まちがえた」
　半べそをかきだした風太に、内心ちょっと頭を抱える瀬莉だった。
「……きっと今度は勝てるよ、元気出して」
　そう声をかけると、風太は気を取り直したようで、次の勝負は勝てて笑顔を見せていた。

　高校３年の森篠琳子も、スキー教室のバスに乗っていた。
　母子家庭でまだ小学生の妹がいるので、決して経済的に余裕があるとは言えない。
　来年から寝子島信用金庫へ就職するので、保険外交員の母の収入と合わせて、多少なりとも経済的に上向くかもしれないと期待しているが。
　とはいえそれまではバイトして家にお金を入れないとならないわけで、今回の指導補佐のバイトに応募した。
　今回の教室には小学３年生の妹の奏子も参加している。
　席は別々だが、様子を窺うと妹は楽しそうな表情で、琳子は安心した。

このページにイラストを設定する