雲の世界で大冒険！｜リアクション

雲の世界で大冒険！

　豪は目を瞬かせた。
「すご……」
　街周辺を探索していたところ、雲の木々が生い茂った先に海が広がっていたのだ。やや青みがかった白い海である。波の音がなんとも心地よい。
「探してみるもんだな」
　雲は雨になって消えると思ってたが、この世界は消えたりしないのだろうか？　海の水は実は雨水だったりするのだろうか。
　豪は波打ち際に歩み寄って、海の水をすくってみる。
「おお、冷たい」
　潮の匂いもする。確かに海なのだろう。
「おい、坊主。魚が逃げるから離れろ」
　見ると、少し先で中年男性が釣糸を垂らしていた。
「あ、すんません。釣りっすか」
「おう、まだ一匹だがな」
　許可をもらって彼の横におかれたクールボックスを覗き込む。そこには氷に包まれた一匹の魚が。
「白の雲魚だ」
　触ってみると、これまた不思議な感触がした。
「なんだ、初めて見たのか？　刺身がうめぇんだぞ」
「食べられるんすか？」
「おうよ」
　しばらく釣り人と話していると、
「おっと。まずいな。引き上げた方が良さそうだ」
「え？」
　釣り人が指を指した先には黒い入道雲ができていた。

　葉月は考え事をしながら歩いていた。丁度通りかかったこの国の女王に何か創って献上してほしいと頼まれたのだ。
「せっかくなら喜ばれるものを」
　女王様と王女様がペアでつけられるアクセサリーなどどうだろうか。
　そんなことを考えているうち、街中が騒がしくなってきた。遠くを指で指す人々。見守っていると、
「黒雲帝国だっ」
　そんな風に叫んでいる男性がいる。
「黒雲帝国？」
「戦争になるかも知れないっ」
　どうやら、白雲王国と対立している国のようだ。
「戦争って」
　来て早々争いごとに巻き込まれてしまうとは。
「隠れるしかないっ」
「おい、避難だ、早く逃げろ」
　街の様子を見ていて気づく。白雲王国の軍隊の人数が異様に少ないのだ。
「何かあるの？」
　戦力差がありすぎる。
「この前の戦いで負傷者が多くて……」
「！」
　その状態はまずいかも知れない。
「国の地図はある？　なんとかできるかも知れないわ」
　近くにいた数人が反応して、すぐに用意してくれた。
　地面に地図を広げる。
「……あの方角なら、進行ルートはここ。ねえ、障害物を作ることは出来る？　ルートを限定すれば、こちらが有利よ」
「出来ると思います。では軍の方に」
　葉月はいつの間にか住人たちに囲まれていた。
「この国の攻撃手段は？」
「雲大砲があります！」
「ここに敵が集中したら、集中放火よ」
　葉月が中心となり、作戦は決まった。国中を巻き込んで、一発勝負の黒雲帝国との戦いが始まる。

　豪が国へ戻って見ると、軍が大砲を運び出していた。
「おっ」
　どうやら戦いが始まるようだ。
「おい、俺も手伝うぞ！」
　豪は彼らに声をかけて、
「ファイトー！」
　ろっこんを使って、それらを次々と運び出す。

　やがて、敵勢力が葉月の考えたルートへ差し掛かる。

「今よ、集中砲火！」

　葉月が指示を出すと、一斉に大砲が火を吹いた。

「よっしゃ、俺も行くぜ！！」

　結論から言って、作戦は大成功のようだ。

　瑠奈は目を開けた。
　城の大図書館。雲のソファに座って寝ていた瑠奈は読みかけの方へ視線を向ける。
「優しいお話、だったな」
　透明な本がキラキラと輝いている。

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