雲の世界で大冒険！｜リアクション

雲の世界で大冒険！

　夢宮瑠奈は視界に広がった光景に目を見開いた。
　見渡す限りの青空と真っ白なもこもことした大地。
　さっきまで確かに寝子島にいたはずなのに。
「こんにちは、あの、ここって」
　雲で出来た建物が並ぶ街、その入り口にいた中年女性に声をかけてみる。
「あらあら、観光の人？　ここは白雲王国よ。ゆっくりしていってね」
　聞くところによれば、すべてが雲で出来た世界なのだそうだ。ついでにお土産屋さんを紹介された。雲を加工した雑貨などが売られているらしい。
「雲加工の体験も出来るからやってみてね」
「体験？」
　どうやらなんでも作れるらしい。早速紹介された店を行くと、加工するための道具を貸してくれた。
「その辺の雲を使って色々作ってみて下さいね」
　道具、雲切りハサミなるアイテムを手に入れた瑠奈は町を探索することにした。
「何作ろうかなぁ」
　それにしても気候が丁度良い。空気が春のようにふんわりしている。
「お昼寝とか……あっ」
　雲で出来たお昼寝用のソファはどうだろう。
「よーし、作ってみよ」
　遠くに見える雲の城を目指そうと坂を上り始めた瑠奈はとあることに気づく。
「わっ綺麗」
　坂の端に落ちていたそれは手のひら大でほんのり、うっすらと虹色が映った雲だった。キラキラと輝いている。
「凄い綺麗」
　拾ってみると、まるで重さがないように軽い。
　瑠奈はハサミを入れてみることにした。真ん中に突き立てて少しだけ切れ目をいれると、綺麗にくり貫く。虹色雲のシュシュの完成だ。
　瑠奈は早速短い髪を束ねて、一部をシュシュで結った。
「それ、可愛いわね」
　そう声をかけてきたのは坂の途中の雲の石の上に座り、スケッチブックを広げている葉月だった。
「ありがと。今作ったの。スケッチしてるの？」
　葉月はこくりと頷いた。
「景色が綺麗だから」
「ほんとだ。寝子島では絶対に見られないね」
　どうやら同じ状況でここへ来たらしい。言葉を交わしたのもつかの間。
「じゃあ、あたしは行くね」
　ソファを作る材料を探さなくては。
「ええ、頑張って」
　瑠奈は葉月と分かれた。

　お城近くの噴水広場には大小さまざまな雲が浮かんだり漂ったりしていた。雲を加工している人が何人かいるので、自由に使って良いのだろう。
　早速取りかかった。外枠を地面に近いかたい雲でソファ型に切り取り、内側はふわふわと浮かぶやわらかい雲で覆った。
「えーっと、これを繋いで……」
　雲をカットした部分は糊などがなくともくっつくので簡単に形を作れる。
「出来た！」
　最初は戸惑ったが、形は間違いなくソファのそれだ。素材は白い雲、手で押すとなんとも言えない感触がある。
　座ってみようかと立ち上がったときである。
「それ、素敵ですね」
　声をかけられた。振り返ると、白ワンピースの女の子が立っていた。銀色のロングヘアで頭に控えめなティアラをつけている。
「そうかな？　初めてだから上手く出来なくて」
「ううん。凄くいいよ。ね、お母様」
　歩み寄ってきたのは銀髪の美しい女性だった。そばに2人のメイドが付き添っている。
「！　女王さま！？」
　女性……白雲王国の女王は優しく微笑んだ。ということはこの女の子は王女なのだろうか。
「本当に素敵ね。どんなときに使うの？」
　お昼寝と言いかけたがなんとなく、
「読書をするときに使いたいと思います。……あの、素敵な国ですね。凄く綺麗であたし気に入りました」
「ふふ。ありがとう。よかったらお城の図書館に寄って行かない？　そのソファを試してみて」
「良いんですか？」
「私は、素晴らしいものを創る芸術家が大好きなの。物を創ったり絵を描いている人が大好きよ」
　お言葉に甘えることにした。女王は散歩に出るとのことで、なんとなく道の途中で出会った絵描きの少女のことを耳に入れておくことにした。

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