期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞

〇試験三日目――篠原翠響の場合

　三年生の篠原翠響は思っていました。
（今回の期末試験はちょっと変。初日は暑かったかと思えば２日目は極端に寒かったし……こんな天候ってなんなの？）　
　もっとも、要領がいいので成績は上の中である翠響は、そんな状況でも意地で全問キッチリ解き終えたのでした。
　結果はどうなることやら、と思いつつ試験三日目を迎えていました。
（今日は乱高下した天候も安定してきたかな）
　と安心していたのですが。
　なぜか突然ちょっとしたことがツボに入り、おかしくてたまらなくなりました。
（藤倉先生……今日のネクタイの柄、何それ？）
　普段ならスルーできるようなことなのに、何を見ても何を聞いても笑いがこみあげてきます。
　思いっきり爆笑したい。捧腹絶倒という言葉を身をもって確かめたい……そんな衝動に駆られてしまいます。
（ちょ、前の男子、なんであんなリズムで頭かいてるの？）
　とにかく、目に映るもの、耳に聞こえるものがなんでもかんでも翠響の笑いのツボを刺激してやまないのです。
　
　なんとかして目の前の試験に集中すべく問題用紙に目を走らせるのですが。
『２９歳の加藤氏は議員に立候補することにした。加藤氏が立候補できる院について正しいものを答えよ』
　加藤、といえばカツラ着用が噂される社会の先生の名前です。
（29歳？　どこが？　年齢詐称でしょ？）
　先生の顔が浮かんでしまい、吹き出しそうになりました。
　笑いのツボは問題用紙の問題文にまで散りばめられていたのです。
　イメージの中で、国会にいる加藤先生のカツラが飛ばされていきます。
（これ、どうにかしないと……ヤバいことになりそう）
　翠響の鍛え抜かれた腹筋が震えます。
　傍から見れば楽しそうに見えるかもしれない表情ですが、こちらは必死に笑いの衝動を抑え込んでいるのです。
（とか何とか言っても仕方ないわね……今日も意地でもすべてをやりきるつもりよ）
　必死で解答を書くことに集中する翠響。
（ていうか、こんなところで爆笑したらもう恥ずかしくって外へ出る気すら失せるわ……）
　どうにか無事笑いをこらえることができたのでした。

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