期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞

〇試験前日――仙藤家の場合

　仙藤蒼は普段はゲーム三昧ですが、さすがに試験ともなれば真面目に勉強はします。
　もともと集中力は高いので、いつもならギリギリまでゲームした後で試験直前の３日間に集中して勉強して試験に臨み、それなりにいい点を取っていたりします。
　が、さすがに今回の期末試験の成績は、内申書に反映されるので気を抜くわけにはいきません。
（一応、寝子高には進学できるだけの成績はキープしているけど、そこに胡坐をかいてたら成績がガタッと落ちかねないわ）
　そんなわけで学校から家に帰ってきてから、最後の追い込みにかかりました。
　ずっと机に向かってひたすらシャーペンをノートに走らせて。
　夕食のことも忘れて勉強していました。
　集中しているので空腹すら感じなかったりするのですが。
　きゅるるる……
「あ」
　さすがに数時間後にはいきなり、空腹でお腹が鳴りました。
　途端に集中が途切れてしまいました。
「そういや、学校から帰ってからずっと机に向かいっぱなしだった……」
「蒼、いる？」　
　と、そこへ姉の声が聞こえてきました。

　少し前のこと。
「ただいま」
　大学の授業が終わり、その他いろいろと用事を済ませて仙藤紫が帰宅したのは午後６時過ぎでした。
　夕食の時に妹の部屋をそっと覗いたら、机に向かって集中している後ろ姿が見えました。
（邪魔しない方がよさそうね）
　紫は一階へ降りて、母親に告げました。
「蒼は今、明日の期末の追い込みに集中してるから、呼んでも降りてきそうにないわ」
「そう、困ったわね」
　という母親に紫は、
「あとで私が蒼に夕食を持っていくわ」
　と微笑みました。
　紫は先に食事をとることにしました。
　今日の夕食はロールキャベツにホワイトシチューをかけたものに、グリーンサラダ。
（勉強中ならおにぎりが食べやすいわね）
　食べ終えた後、おにぎりをつくって、母が作ってくれたメニューとお茶と一緒にトレイに乗せて。
　二階の蒼の部屋へ向かいます。

　紫は蒼の部屋の前に着いて声をかけ、それからドアをノックするため床にそっとトレイを置きました。
　コンコン。
　そしてまたトレイを手にします。
「お姉ちゃん？」
　ぱたぱたと立ち上がり、蒼がドアを開けました。
　紫はおにぎりとロールキャベツとサラダを載せたトレイを持って立っていました。
「夕食持ってきたわよ」
「ありがとう」　
　蒼は机の上の勉強道具を脇によけるとトレイを受け取り、さっそく食べ始めました。
「いただきます」
（どうやらちょうどいいタイミングだったみたいね）
　そう思いながら紫は部屋の中へ入り、蒼がおにぎりを頬張るのを微笑ましげに見ていました。
「勉強、はかどってる？」
　声をかける紫に蒼は答えます。
「うん、かなり集中してたから、お腹が空いたのも気づいてなかった」
　蒼はあっと言う間に美味しい夕食を平らげて、言いました。
「ごちそうさま。やっと人心地着いた」
「わからないこととか、ある？」
　姉に問われ、蒼はちょっと考えました。
「実は英語の文法でちょっと困ってるの」
「どれ？　よかったら見てあげましょうか」
　紫はトレイを片付け、問題集を開いた蒼の質問に答えます。
「ああ、これはね……」
　木天蓼大学の1年生である紫は、寝子島中学に実習に行って授業をしたこともあるのです。
　紫の説明に、蒼が目を輝かせました。
「あー、そういうことなの」
「わかった？」
「うん、ありがとう」
「それじゃ、頑張ってね」
　それから紫は部屋を出ていき、蒼は再び一人での勉強に戻りました。
　
　結局、試験勉強が終わったのは、日付が変わる少し前のことでした。

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