期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生の冬の日＜物語編＞

〇試験三日目――折河樹の場合

　二年生の折河樹は、社会のテスト中の教室で苦しんでいました。
（くっ……俺ともあろうものが今回の裁定者の査問は外なる神からの干渉により闇の力がうまく扱えていない！）
　樹は試験前に風邪をひいていました。
　なんとかテスト前には治ってホッとしていたのですが……
（おまけに前日二日のスルトの猛威（暖房が暑かった日）とコキュートスの息吹（暖房が寒かった日）の影響か再び外なる神から干渉を受けつつある）
　つまり、悪寒がしていて風邪がぶりかえしそうな予感がありました。
（これは試練か……？　試練も残り二日、このままではまずいかもしれん……）
　担任の高橋先生は樹の苦しい状況に全く気付く気配がありません。
　おそらく女子にばかり目を向けていて、男子はカンニングさえしてなければ興味がないのでしょう。

　さらに、この大変な時に樹は気づいてしまったのです。
（シレンがまずいかもシレン……？）
　意図していないダジャレに、樹は謎のツボにはまってしまいました。
　どうやら神魂の影響のようですが。
（くっ！　なぜだ！　腹筋がうずく……しずまれ……しずまれ俺の腹筋……）
　いかに人目を気にしない樹とはいえ、試験中に笑い出すわけにはいきません。
（今はこの世の理をときあかす時（社会のテストのこと））
　しかし更に。
（トキあかすトキ……ぐっ！　いかん……邪眼がうずく……！）
　ツボにはまったのを耐えるかのように左目をおさえて頭を机につけ、樹は思わず小さな声で「沈まれ」とつぶやいていました。
　深呼吸して、樹は気づきました。
（むぅ！　なぜだ！？　途端に回りにも闇の加護の力を感じるように！）
　樹のろっこん『邪気眼の共鳴』は周囲の思考に厨二病な発想を与えるものでした。
　目を押さえてつぶやいたことでろっこんが発動し、樹の周囲の生徒たちまで厨二病な思考に捕らわれ、同じようなリアクションをとっていたのです。
（これは、闇の加護が俺に味方しているのか？）
　思わずツボにはまったのを忘れたという点で、樹にとってありがたい状況となりました。
　そして笑いをこらえるのに集中したおかげで、風邪のつらさが気になるどころではなかったのです。

このページにイラストを設定する