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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
マッチ売りは御馳走の夢を見るか
龍目 豪が我に返ると、辺りは一面の雪景色だった。
「さ、寒い……」
視界の端で、ちらりと赤い布が翻った。
とっさに視線を投げて、龍目は思わず声を上げる。
「何だこりゃ？！」
かわいらしく白いレースがあしらわれたスカートに、品の良いブーツ。
反射的に、龍目は自分の胸へ手をやる。
「よかった……女体化はしてねぇのか……」
いやこれはこれでやべぇな、と、まじまじとガラスに映った己の姿を見る。
手には覚えのないカゴを持っていた。
「なんだこれ……」
小さな箱に書かれた英字は読めなかったが、開けてみるとマッチが入っていた。
「……何の冗談だよこりゃ」
思わず額を抑える。
（こんな時代にマッチなんか売れるかよ……女ならともかく、こちとら男だぞ）
だが、いつまでも悶々としていても仕方がない。
龍目は深く息を吐き、ぱん、と気持ちを切り替えるように手を叩いた。
「仕方ねぇ、売るっきゃねぇか！」
腹を括ってからの龍目の行動は早かった。
てきぱきとあたりを見渡し、手ごろな店を探す。幸い、すぐにコンビニが見つかった。
「どれどれ、っと」
何をしているんだと自分を見る連中を気に留めず、ごみ箱の中から、無造作に捨てられた新聞紙を取り出す。ポケットを探ると幸い小銭がいくらかあったので、牛乳の小さなパックと割りばしのセットを買い、レジへ向かう。
若い女性の店員は、少し驚いたように龍目を見ていた。
「あ、すみません。割りばし何本かもらってもいいですか？」
少々厚かましいかもしれない、とは思ったが、店員は快くうなずいた。
「何膳いります？」
「じゃあ3膳ぐらい。すいません、無茶なこと言って」
「いえいえ、罰ゲームか何か、やらされてるんでしょう？ 似合ってるけど、大変だろうから。頑張ってね」
自分の服装を思い出し、龍目は「あはは……」とあいまいな笑いを浮かべた。
人のよい店員は、「お箸、少しおまけしておくね」と言い添えて、小さなビニール袋の中に多めに箸を突っ込んでくれた。
それから花火の使用許可があるエリアへ移動して、拾ってきた道具を洗い、周囲を見渡す。
幸い、人通りはそれなりにある。客引きには悪くない。
子連れも多い時間帯だ。狙いを遂げるには十分なタイミングだろう。
「さて、やるか！」
龍目はスゥ、と息を吸い込んだ。
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい！ 本日限定！ マッチ売りの少女ならぬマッチ売りの青年の、火起こし教室、始めるぜ！」
小さな子どもが足を止めた。物珍しがるように、大学生ごろの若者たちも集まってくる。
龍目はボーイスカウトの経験者だ。火起こしのやり方、教え方は手慣れたものだ。
「危なくないかしら？」
と心配そうな母親に
「大丈夫ですよ。ちゃんとやり方を知らずに後で火傷するより、どうやって接したらいいのか理解してる方が安全です」
と笑って見せる。
いつの間にか、周囲には人が集まり始めていた。
これだけ集まれば十分だろうと見越して、龍目は声を上げる。
「よし！ 今日はお集りの皆さまに、火の起こし方を伝授しましょう！ たとえば、この冬ちょっとしたスキー場に行ったとき、暖炉に火を起こせたり。はたまた、夏の野外でキャンプファイヤーを楽しんだり。レジャーに火は「つきもの」だが、誰にでもうまくつけられるかと言えば、そうじゃない。だけど、ちょっとしたコツさえつかめば、誰でも簡単に火がつけられるんです！」
先ほどゴミ箱から拾ってきた新聞紙の束を見せる。
「まずは準備。いきなり薪に火はつかねえ、燃えやすいものが必要だ。野外なら枯草や小枝もいいが、ちょうどいいのがあるとは限らない。新聞紙や割り箸を用意すると便利だぜ」
興味を持って近付いてきた子どもと目が合った。後ろにいる母親が頷いたので、手招いてみる。
「ほら。マッチは使ったことあるか？ 怖くないから練習してみな？」
子どもは頷いて、マッチをこすろうとした。だがまだ上手にできないらしく、困ったような顔をして龍目を見上げた。
「大丈夫、慌てねえで落ち着いて。……そう、力を入れ過ぎずに、だが離さずにマッチを滑らせる！」
マッチで風で消えないよう、体でカバーしてやる。
子どもが灯したマッチの火は、ぱっと燃え移った。火がついたのを確認して、井桁に組むように割り箸を入れていく。
「さて、やり方がわかったら忘れないうちに家で復習してください。マッチは湿気らないようアルミで包むのを忘れずに。マッチをどうぞ！ 見物料はお気持ちで十分、この帽子に入れて！」
ぱちぱちと拍手が沸き起こる。
帽子の中には、マッチ代をはるかに上回るだけの金銭が投げ込まれていった。
「さ、寒い……」
視界の端で、ちらりと赤い布が翻った。
とっさに視線を投げて、龍目は思わず声を上げる。
「何だこりゃ？！」
かわいらしく白いレースがあしらわれたスカートに、品の良いブーツ。
反射的に、龍目は自分の胸へ手をやる。
「よかった……女体化はしてねぇのか……」
いやこれはこれでやべぇな、と、まじまじとガラスに映った己の姿を見る。
手には覚えのないカゴを持っていた。
「なんだこれ……」
小さな箱に書かれた英字は読めなかったが、開けてみるとマッチが入っていた。
「……何の冗談だよこりゃ」
思わず額を抑える。
（こんな時代にマッチなんか売れるかよ……女ならともかく、こちとら男だぞ）
だが、いつまでも悶々としていても仕方がない。
龍目は深く息を吐き、ぱん、と気持ちを切り替えるように手を叩いた。
「仕方ねぇ、売るっきゃねぇか！」
腹を括ってからの龍目の行動は早かった。
てきぱきとあたりを見渡し、手ごろな店を探す。幸い、すぐにコンビニが見つかった。
「どれどれ、っと」
何をしているんだと自分を見る連中を気に留めず、ごみ箱の中から、無造作に捨てられた新聞紙を取り出す。ポケットを探ると幸い小銭がいくらかあったので、牛乳の小さなパックと割りばしのセットを買い、レジへ向かう。
若い女性の店員は、少し驚いたように龍目を見ていた。
「あ、すみません。割りばし何本かもらってもいいですか？」
少々厚かましいかもしれない、とは思ったが、店員は快くうなずいた。
「何膳いります？」
「じゃあ3膳ぐらい。すいません、無茶なこと言って」
「いえいえ、罰ゲームか何か、やらされてるんでしょう？ 似合ってるけど、大変だろうから。頑張ってね」
自分の服装を思い出し、龍目は「あはは……」とあいまいな笑いを浮かべた。
人のよい店員は、「お箸、少しおまけしておくね」と言い添えて、小さなビニール袋の中に多めに箸を突っ込んでくれた。
それから花火の使用許可があるエリアへ移動して、拾ってきた道具を洗い、周囲を見渡す。
幸い、人通りはそれなりにある。客引きには悪くない。
子連れも多い時間帯だ。狙いを遂げるには十分なタイミングだろう。
「さて、やるか！」
龍目はスゥ、と息を吸い込んだ。
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい！ 本日限定！ マッチ売りの少女ならぬマッチ売りの青年の、火起こし教室、始めるぜ！」
小さな子どもが足を止めた。物珍しがるように、大学生ごろの若者たちも集まってくる。
龍目はボーイスカウトの経験者だ。火起こしのやり方、教え方は手慣れたものだ。
「危なくないかしら？」
と心配そうな母親に
「大丈夫ですよ。ちゃんとやり方を知らずに後で火傷するより、どうやって接したらいいのか理解してる方が安全です」
と笑って見せる。
いつの間にか、周囲には人が集まり始めていた。
これだけ集まれば十分だろうと見越して、龍目は声を上げる。
「よし！ 今日はお集りの皆さまに、火の起こし方を伝授しましょう！ たとえば、この冬ちょっとしたスキー場に行ったとき、暖炉に火を起こせたり。はたまた、夏の野外でキャンプファイヤーを楽しんだり。レジャーに火は「つきもの」だが、誰にでもうまくつけられるかと言えば、そうじゃない。だけど、ちょっとしたコツさえつかめば、誰でも簡単に火がつけられるんです！」
先ほどゴミ箱から拾ってきた新聞紙の束を見せる。
「まずは準備。いきなり薪に火はつかねえ、燃えやすいものが必要だ。野外なら枯草や小枝もいいが、ちょうどいいのがあるとは限らない。新聞紙や割り箸を用意すると便利だぜ」
興味を持って近付いてきた子どもと目が合った。後ろにいる母親が頷いたので、手招いてみる。
「ほら。マッチは使ったことあるか？ 怖くないから練習してみな？」
子どもは頷いて、マッチをこすろうとした。だがまだ上手にできないらしく、困ったような顔をして龍目を見上げた。
「大丈夫、慌てねえで落ち着いて。……そう、力を入れ過ぎずに、だが離さずにマッチを滑らせる！」
マッチで風で消えないよう、体でカバーしてやる。
子どもが灯したマッチの火は、ぱっと燃え移った。火がついたのを確認して、井桁に組むように割り箸を入れていく。
「さて、やり方がわかったら忘れないうちに家で復習してください。マッチは湿気らないようアルミで包むのを忘れずに。マッチをどうぞ！ 見物料はお気持ちで十分、この帽子に入れて！」
ぱちぱちと拍手が沸き起こる。
帽子の中には、マッチ代をはるかに上回るだけの金銭が投げ込まれていった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年04月02日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年04月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年04月09日 11時00分
