虹色雪の降る島で｜リアクション

虹色雪の降る島で

●理想郷

　空を見上げたら、カラフルな雪が降っていた。

「創作意欲をそそる雪だなぁ……なんで色が変わるんだろう？」

　響タルトは目の前に広がる不思議な光景を眺めながら、ねこったーを開いた。
　おそらくこの雪は島全体に降っているはず。だからこれに関する情報をきっとみんなが呟いているに違いない。

「えーと、なになに……」

　ねこったーを見ていると、色々なコメントが写真入りで載っていた。雪の舞う空を撮ったものや、この雪で作ったと思われる人形や動物の画像が並んでいる。

「僕の予想通り、寝子島中に降ってるみたい」

　そうして情報を集めていると、ある投稿が目を引いた。作った雪像が自らの意思で動き出したという。しかも１人ではなく、かなりの人数がそれを経験している。
　動画で投稿されたものもあり、雪でできた猫が自分の足で歩いている。映像から伝わる雰囲気や偶然入った人々の声から加工ではなさそうだ。そしてタルトの興味を惹いたのは、猫の色によってそれぞれに個性が生まれていることだった。

「もしかして、雪の色で作った像の性格が変わる？」

　しばらく考えたのち、タルトはあることを閃いた。

「これは、やるっきゃないね！」

　自分の想像を形にするために、さっそくタルトは行動に移った。

「……よし、いい感じの場所を見つけたぞ」

　タルトのたどり着いた場所は、十分な雪が積もっており、色の種類も豊富だった。彼女の閃きとは、美少年の雪像を作ることだった。

「なるべく実物大に作りたいけど、１人じゃきついかなぁ。子供サイズに作ることにしようか」

　そう言いながら雪を手に取ると、少しずつ形を整えていく。このために彫刻刀を持ってくるほどの本気度だ。

「あ、そうだ！　１人完成したら他の子を作るのを手伝ってもらおう♪」

　自分の構想をさらに加速させることを思い付き、タルトは上機嫌に作業を続けた。とはいえ、雪が降り続けるなかでの作業は寒さとの戦いでもある。

「僕は！　５人の美少年の絡みを見るんだ！　だから寒さなんかに負けないぞ！」

　そして１人目が完成すると、２人で次の子を作り、やがて雪で作られた美少年が５人生まれた。それぞれ赤、青、緑、紫、白と雪の色を分けて作られている。それがまるで１人１人のイメージカラーのように感じられた。
　５人揃ったところでタルトはそれぞれに近づいて声をかける。

「青は君のこと気になってるみたいだよ」
「赤は君のこと好きだって言ってたよ」
「紫は素直になれないだけで、ほんとは君のことが好きなんだよ」

　タルトの言動とそれぞれの性格によって生まれる、雪で出来た人間模様。お互いに意識したり、意識するがゆえにそっけない態度をとったり。そんな５人のやりとりを、タルトは幸せな笑みを浮かべる。

（だんだん意識しあってきたぞ！　もう一押し！）

「白は君が好きなんだけど、赤が強引で迷ってるって言ってた」

　直線的に想いを伝えるのか、遠回しに伝えるのか。どのような会話を続けて、お互いの意識を確かめるのか。造形に本気を出した甲斐あって、本物の美少年たちがやりとりしているように見える。

（いいよいいよー！）

　ものすごい勢いでテンションがあがるタルト。寒さなどその光景の前では無いも同然だった。

（これは緑白……いやいや青紫も捨てがたい……赤青というのも……）

　そんなことをずっと考え続けるという、とても充実した時間を過ごした。

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