はちゃめちゃ！おもちゃ大暴走！｜リアクション

はちゃめちゃ！おもちゃ大暴走！

●散歩と共闘

　佐和崎紗月は間近に迫った大学受験に向けて、初瀬川理緒と一緒に受験勉強をしていた。部屋には参考書をめくる音とペンを走らせる音だけが鳴っている。その音のほとんどは紗月から聞こえていて、理緒のペンはだんだんと動きが鈍くなっていた。
　そして、ついに理緒は参考書を閉じるとそのまま大の字に床へ横たわった。もう勉強する集中力が尽きたのだろう。理緒は顔だけ紗月のほうに向けながら話しかける。

「ねえ紗月、気分転換に散歩に行かない？」
「でも、まだ１時間しか経ってないよ……」
「１時間も経ったわ。根詰めすぎるのも良くないでしょ」
「それはそうだけど……」

　そんな問答を繰り返しながら、結局理緒に押される形で、２人は散歩に出かけることにした。外に出ると、すぐに普段とは違う街の様子に気づく。
　なぜか街中をぬいぐるみやおもちゃが好き勝手に動き回っている。そんなぬいぐるみたちと遊んでいる人もちらほら見えた。

（これは……神魂の仕業ね）

　紗月はすぐに気づいたが、どうしていいか分からず、おろおろする。そんな紗月を尻目に理緒はぬいぐるみたちに近づいて早速遊び始める。ぬいぐるみに抱きついたり、じゃんけんしたりと、すっかり馴染んでいる。紗月は相変わらず戸惑ったままだった。

「紗月も一緒に遊ぼ」

　そういって笑顔で手招きする理緒。
　気が進まないけれど、仕方なく適当にぬいぐるみやおもちゃを可愛がる。ただ、そうして過ごしているうちにだんだん楽しくなってきた。いつのまにか紗月は静かに微笑んでいた。
　ほどほどに遊んだらぬいぐるみたちも満足したのか、手を振りながらどこかへと去っていった。

　改めて街の様子を見ると、おもちゃの剣やピストルも落ちている。
　理緒は、そのなかでやけに目立つ、大型のグレネードランチャーを手に取る。まるでテレビの特撮ヒーロー番組で主人公が使うような代物だった。

（ちょっと邪魔っぽいかな）

　そう思ったものの、その辺にほったらかすのもどうかと考えて持っていくことにした。散歩を続けているとやがて星ヶ丘マリーナの近くまでやってきた。
　そこで、事件は起きた。正確には起こっていた。

「はあああ！！」
「おおおお！！」

　全長２メートルほどのロボットと浅井幸太が拳で語るが如く戦っている。

（もしかして、あそこで戦ってるのって浅井先生？　あのロボットをやっつけようとしているけど、大丈夫？）
（先生が戦ってる……どうしよう……）

　理緒と紗月が心のなかで考えている間に戦闘は激しくなる一方だった。
　すると理緒が先ほど拾ったグレネードランチャーを構えたかと思うと、ロボットに向かって発射した。弾丸がロボットの胴体に命中すると発光して目が眩みそうになる。
　しかし派手に光った割には、ロボットにはまるで傷がついていない。どうやら単なる演出だったようで、威力はほとんど無かったらしい。
　それが頭にきたのか、理緒がムキになって何発もロボットに向けて撃ちまくる。浅井先生は弾に気をつけながら、なおもロボットと拳を交えている。その間、紗月は光に包まれそうな状況でも冷静にロボットを観察していた。

（……あれ？　頭の後ろにあるの、スイッチかな？）

「理緒ちゃん、あのロボットの後ろにスイッチっぽいのがあるよ」

　それを聞いた理緒はグレネードランチャーを構えなおす。しかし先ほどから連発していたので、残りの弾数は１発。浅井先生がロボットを抑えているうちにその後ろに回りこむと、ロボットの背後めがけて最後の１発を撃ち込んだ。
　今まで以上に激しい光が辺りを包む。
　光が収まり、全員が目をゆっくりと開くと、そこには機能停止したロボットの姿があった。

「勝った……」

　勝利をすぐに実感できなかった３人だが、改めて完全に止まったロボットを見て確信した。

「すごいよ理緒ちゃん！」
「紗月のおかげよ」

　２人は浅井先生と一緒になって勝利を喜んだ。

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