秘密を守れ！｜リアクション

秘密を守れ！

◆封印への道のり

　昼休みの寝子島高校では、昼食を終えた生徒たちが思い思いの時間を過ごしていた。水上桜もその一人で、図書室で本でも読もうかと棚を見て回っている。小説や郷土史やら様々な本が並ぶ中で、桜は目についた本を手に取った。写真集サイズのそれを開けば、そこには想像を絶するものがあった。

「くくぁwせdrftgyふじこlp」

　口からおよそ地球の言葉とは思えないそれを漏らしつつ、桜は写真集を落とすのを必死に堪えた。
　そこに写っていたのは非常に……非常に露出度の高い黒ランジェリーを見に纏った桜の姿であった。その姿には桜自身見覚えがある。以前、魔界の悪魔に召喚されて「悪魔による悪魔のための写真撮影会」のモデルにさせられた際のものであった。なにも自ら進んでやったのではない。そうしなければ元の世界に戻ることが出来ないからであって、けして桜が露出願望持ちというわけではない。
　場合によっては年齢制限も辞さない、かなりセクシーなポージングの写真が何枚も何枚も載っているその写真集。慌てた彼女が表紙を見れば、再び悲鳴が上がる。そこには『水上桜写真集』という文字とともに、ちょっと健全の枠を超えてしまいそうな、バナナとケフィアとピースが似合いそうな顔をした彼女の写真が！！！

「こ、こんなのが出回ったら私の人生が詰んじゃうわ」
「どうしましたか？」
「いっいや！　なんでもない！」

　席に戻った彼女の横を図書委員が通りかかったので、桜は慌てて野生動物図鑑を置いた。これでＡはＡでもアニマル写真を見ていることになる。しかし……。

「ぐっ！　なにこれ、動くの？」

　カタカタカタ……と写真集が動き出した。桜は周囲に誰もいないことを確認して、

「このっ！　えいっ」

　力技でカバンの中に押し込んだ。

「なんとか収まったみたいね……問題は」

　問題は授業中である。幸いにも今日は荷物の多い日であったから、桜はカバンの奥底に写真集を隠した。図鑑どころではないありとあらゆる荷物の重みが写真集にのしかかる。

「よしっ！」

　ひとまずこれで日中は大丈夫そうである。たぶんおそらく、きっと。

「帰ったら……帰ったら永久封印してやるわ！」

　桜は決意を固めつつ、図書館を出るのであった。

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