寝子中の文化祭を盛り上げろ！｜リアクション

寝子中の文化祭を盛り上げろ！

　寝子中文化祭、通称『ちゅー祭』。
（どうしようか……まあ、仕方ないよね）
　仙藤蒼は、なぜかその実行委員長になってしまいました。
（放課後のゲーセン通いはしばらく封印ね）
　実行委員会で青木慎之介が出した、『生徒主体での出し物や演劇、合唱、部活の展示発表、そしてちょっとした出店』という案は生徒たちには好意的に迎えられた。
　しかし「交渉は俺に任せろ！」と言うので任せたら、慎之介は後先考えず変な英語交じりのトークでガンガン校長とやり合い始めてしまった。
（駆け引きってものを知らないの？）
　とあきれた蒼は、必然的に──ゲーマーとして鍛えたコミュニケーション能力や駆け引きの能力をいかんなく発揮して、校長先生をなだめに回ることになったのである。
「先生、私達は三年間の集大成として自分たちで企画を考えて実施したいのです。高校生になっていざ主体的に動くとき、全く経験がないと困ることになると思うからです」
「……確かに、主体的な学びは重要ざますね」
　そんな感じで校長先生を言いくるめた蒼に、慎之介は感嘆の声を上げました。
「ユーすごい、トークの才能あるよ！」
「……慎之介君、もっと駆け引きを考えたほうがいいよ？」
　
「ステージでの出し物で音響機材を使いたいのですが」
「いいですよ、使い方は演劇部の子が詳しいから聞いてみてちょうだい」
　と、各先生方と交渉したり、必要なものの調達をしたり。
「各クラスの出し物の一覧は出揃った？　とりあえず学年ごとに固めて、学年内の順番はランダムな感じでどうかな？」
　等、部活の展示やクラスの出し物についての持ち時間や順番などの調整をしたり……大忙しですが。
（何だか経営シミュレーションゲームをやってるみたいで楽しいかも）
　さすがゲーマーな発想です。
（うちのクラスの出し物はストリートダンスね……練習もやらないと）
　実行委員長としての仕事の合間にダンスの練習と、しっちゃかめっちゃかです。

　木天蓼大学１年の仙藤紫は、最近妹の蒼の帰りが遅いのが気になっていました。
「どうしたの？　毎日ゲーセンに行ってるわけじゃないわよね？」
　何事かと思い聞いてみたら。
「違う違う、文化祭の実行委員長になったので忙しいのよ」
　という返事が返ってきました。
（放課後のゲーセン通いを封印しているのだから、この子なりに頑張ってるのね）
　微笑ましく思うのでした。
　寝子中ＯＧの紫にとって、中学の文化祭はあまり印象に残るものはありませんでした。
（地域ぐるみで盛り上がる寝子高の文化祭に比べると、本当に地味だったものね）
　面白くはないだろうけど、蒼が実行委員長として頑張っているなら見に行こうかと紫は思いました。

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