まもの化！　きもだめし委員会｜リアクション

まもの化！　きもだめし委員会

☆はじまり、はじまり

　２３時、寝子島高校北校舎職員玄関前。
　暗闇の中にぬぼーっと青白い顔が浮かび上がった。
「皆様ぁぁぁ、今宵は寝子高恒例ぃぃぃ、きもだめし委員会主催のぉぉぉ、校内きもだめし大会にご参加いただきぃぃぃ誠にありがとうございますぅぅぅ」
　きもだめし委員長の木茂為史――通称・きも先輩が、間延びした声で挨拶する。
　参加者に血まみれのきも先輩の写真つきハガキを渡してルールの説明を始めた。
「校内３ヵ所にある『きもハンコ』を、この『きもハガキ』に押し、屋上の『きもポスト』に投函する。ハンコは１階美術室、２階理科室、３階音楽室にありますぅぅぅ……」
　
「夏休みのイベントとして、肝試しは外せないよねー」
　去年に続いての参加となる八十八旗信彦は余裕の表情だ。
「夏の風物詩、ねえ……」
　信彦に誘われて参加した上穗木千鶴は最初はあまり乗り気ではなかった。
（でも、肝試しなら合法的に？　信彦くんに抱き付くチャンスがあるかも）
　そう思って大好きな信彦くんの誘いに応じたのだ。
「去年はお化け役だったから、今年は客として参加するよ。去年で脅かすポイントはだいたい分かってる、ちーちゃん、俺がついてるから全然心配ないって」
　ノリとイキオイだけで突き進むお調子者の信彦が豪語する。
「そ、そうだね……」
　説明も終わり、順番に出発することとなる。
「さあ、行くよー」　
　さりげなく千鶴の手を取り歩きだす信彦。
（役得……もとい、紳士の義務を果たすよ）

　校舎内では、羽生碧南が準備をしていた。
（私がきもだめし委員に任命されるなんて予想外もいいところだったわ。何しろこういうのって実はあんまり好きじゃないし）
　とはいえ、碧南の格好は白いボディースーツに身を包み、顔はこれまた白いドーランで塗って真っ白けになるという本格的なものだった。
「素晴らしぃぃぃ、これならみんな怖がること間違いないねぇぇぇ」　
　いつの間にかやってきたきも先輩も満足そうだ。
　だが乙女ゲーム好きな碧南はすでに脳内妄想に入っていて、きも先輩など眼中にない。
（これって要するに攻略対象にお近づきになるイベントだよね。きもだめしといったらあのゲームの先輩とか、最近プレイした幼馴染との胸キュンシーンが……！）
　身をくねらせ、すっかり挙動不審になっている碧南は、ある意味意図しない恐さがあった。

　きもだめし大会は、例年と変わらないように幕を開けた。
　しかし、今年は何か不思議な魔の空気が漂っていたのである。

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