赤い霧の悪夢｜リアクション

赤い霧の悪夢

●ゾンビハント

　ある夜、サキリ・デイジーカッターはコンビニヘ向かい、適当に欲しいものを買い終えると店を後にする。その帰り道で行きには無かった赤い霧とゾンビの姿を視認した。

（こういう場合いつもはテオが空間を切り分けてくれるけど、今回はそのままなのがマズイね。一般人に被害が出てしまう）

「やれやれ……テオもしっかり仕事をして欲しい物だ。急いでゾンビハントを始めよう」

　サキリは戦闘用ナイフを２本取り出す。誰に教わったわけでもないが、彼は刃物の扱いが異常に上手い。また刃物依存症でもあり、こうして服の中に小型刃物を多数携帯している。ゾンビがこちらに気づく前に距離をつめて、ろっこん『斬空赤刃』でその背後に瞬間移動する。そして鋼鉄をも破壊する威力を持った赤い刃がゾンビの首を切断した。ゾンビは再生することなくそのまま倒れる。地面の上で手足は動いているが、ただ這うだけでもう誰も襲うことはないだろう。
　これを基本戦術としてゾンビを狩っていく。複数のゾンビを相手にするときは包囲されないように、高速連続転移を用いて一撃離脱を行う。霧に紛れて増え続けるゾンビに対処するには、こちらも目の前だけ見ていてはいけない。近接だけでなく、赤光化したナイフでの投擲攻撃も交えて中距離のゾンビにも攻撃を仕掛ける。まさに変幻自在という言葉が似合う動きである。
　しかし、状況が不利と見たらビルの屋上など安全な場所に転移して体制を立て直す。見下ろすと街中を走りまわるゾンビと逃げ回る人々で慌しい。

「走るタイプのゾンビとは今風だよね。歩くタイプより危険度が段違いだ」

　その様子を眺めながらこれからのことを考える。一般人の被害は防ぐために、速やかに広範囲のゾンビを駆除してまわりたい。そのために移動には自転車を使用した。深夜営業の店舗や駅前など、夜中でも人が外を歩いていそうな場所を優先的に警戒する。そしてその予想は的中する。
　ゾンビは人を本能的に襲っているため、やはりこういった場所に集まりやすい。逃げ惑う人々のなかに、サキリと同じくゾンビに立ち向かう者が何人か居た。彼らと共闘しながらゾンビの数をひたすら減らしていく。
　やがて朝日が昇り、赤い霧が消えるとゾンビもその姿を消した。フツウを守り、朝を迎えられたことにほっと一息つくサキリ。

（でも徹夜で戦い続けたら流石に疲れたよ。これから学校があるんだよね、授業中に居眠りしないように気をつけないと）

　数時間後に始まる日常を気にかけつつ、束の間の休息を取った。

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