恋心を取り戻せ！｜リアクション

恋心を取り戻せ！

「悪質なスリの道具め…奪った物、全部この場に返せ！」
　そう言いながら恵御納は小人を折り畳み傘で叩き潰した。ぽろりと、小人の手からハートが溢れる。
　それを回収して、恵御納は一息ついた。街中で見かける小人を叩き潰して何時間が経っただろう。白石と一緒に行動しているうちに、小人の行動パターンが読めてきていた。
「恵御納さん、疲れたでしょう。はいこれ」
　白石がそう言って、自販機のお茶を差し出す。それを受け取り、軽く会釈をした。
「ありがとうござい、ます」
「どういたしまして、休憩も必要だものね」
　公園のベンチに座りながら、ふたりは空を見上げた。
「小人、あとどのくらいいるの、かな……」
　恵御納の呟きに白石が反応する。
「さあ……今のところ、十数体は倒している気がするけれど。恵御納さんは、全部の小人を倒すつもり？」
「人の気持ちを奪うなんて……許せない、から」
「そう……なら、一休みしたら行きましょうか。まだ、盗まれて困っている人もいるかもしれないし」
　そう言って白石はお茶を飲み干す。恵御納もつられたようにお茶を飲み干した。
　そして公園を出ると、すぐに小人は見つかった。今にもカップルにぶつかりそうになっているところだ。
「……！」
「そこの二人、ちょっと待って！」
　白石が声を掛ける。カップルは立ち止まり、何事かと振り返った。そこに白石が駆け寄る。
「待って！　逃さないわ！」
そして白石は慣れないヒール靴で駆け出し、小人の上へと転んでしまった。
「きゃっ！」
　もぞもぞと、下で小人が動く。白石の腹から胸へ移動していくのがわかる。
「そこはだめ……！」
　白石の胸を確かめるように動く小人に、思わず艶っぽい声が漏れた。そして、なんとか両手で小人を捕まえる。ハートは持っていなかったらしく、何も出てこなかった。
「白石さん、大丈夫……？」
「ええ、なんとか。盗まれる前に防げたみたい」
　そう言って小人をぎゅっと握りしめると、ピンク色の霧のような物体に変化して霧散していった。

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