自転車で駆け抜けろ！｜リアクション

自転車で駆け抜けろ！

●いよいよゴールへ

　一足先にまきびしゾーンを突破した玲音はゴールの星ヶ丘駅を目指して一気に漕ぐ。ここからは純粋にスピード勝負になるため、今のうちに引き離しておきたい。玲音のマウンテンバイクはスピードが出ないため、どうしてもオンロードタイプには相性で負ける。障害物ゾーンで稼いだ分をどこまで残せるかが勝敗を分ける。
　そこに迫ってきたのは遠海だった。まきびしゾーンでタイヤの大部分を犠牲にして進んだ作戦が功を奏した。
　しかしさらに後方から続々とまきびしゾーンを抜けた選手たちがやってくる。そのなかには心や夏朝、まゆらの姿があった。心はサドルを元に戻しつつ、タイヤに刺さったまきびしをすっと処理した。夏朝やまゆらは前傾姿勢をとると勢いをつける。その後ろには豪の姿も見えた。彼は心と接触した選手と別れたあとも、他の人の救護をしていて遅れをとってしまった。しかし、ここから巻き返そうと力を込める。
　最後のストレートにさしかかる頃には玲音や遠海に他の選手たちも追いつき始め、勝負の行方が読めなくなっていた。ここから一体どうなるのか。そんななか、夏朝は他の人にぶつからないように気をつけながらさらに加速する。

（後でまきびし全部拾いに来るから……今は、先に……！）

　夏朝はそんなことを考えながら薄橙色の自転車で駆ける。まゆらは、あとは全力を尽くすのみと言わんばかりにペダルを踏み込む。
　そのときだった。
　近くにいた選手がペダルを踏み外してバランスを崩した。ゴール目前で焦ったのだろうか。転倒はしなかったが、お互いの間隔が近いため、その揺れは十分伝わった。それに動揺して思わず停止したり、コースの端へ一時避難する人が現れた。
　だがそのなかを突っ切るように、ひたすらゴールを目指す選手たちによってレースは続く。

　混乱の中、最初にゴールテープを切ったのは、遠海だった。続けてなだれ込むように、まゆらが『GOAL』の看板をくぐる。そこからわずかに遅れて玲音がゴールラインを超えた。上位３名が確定した後もレースは続き、全員が無事にゴールしたところでレースの終了が告げられた。

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