らっかみ！　夏のーぶら祭｜リアクション

らっかみ！　夏のーぶら祭

　御剣刀は、小山内　海と共に九夜山を訪れていた。夏の九夜山もスケッチしたい、という海の要望に応えて、刀も九夜山で剣術の鍛錬をすることにしたのだ。二人で連れ立って山を登る。それにしても、暑い。この暑い中付きあわせちゃって悪かったかな、と海は刀の顔を少し覗き込んでみた。
（あれ?　刀なんか顔赤くない?　大丈夫?）
　さらさら、とスケッチブックに書いて問う。
「ん？　あ、あぁ」
　顔が赤いのは暑さのせいだけではない。そういえば前にもこんなことがあったなぁなんて思いだしてしまったのだ。まさか、二度目は無かろう。刀はそう思い直し曖昧に笑う。
（スポーツドリンク持ってきたけど飲む?）
「ああ、助かる」
　海からボトルを受け取って、一口。のどを潤して、緊張を誤魔化した。
「今日も暑いな～、これだけ暑いと熱中症にも気を付けないと」
　うん、と頷き、海は木陰を選んで歩く。そして、気に入った風景をみつけては手元のスケッチブックに残して行った。
「山だから木々も茂っているけど油断は禁物、十分に注意しよう」
　海は再度頷く。
（それにしても……暑いなぁ）
　木陰が多いし、コンクリートと違って足元は土。だから街よりはマシなはずなのだが、それでも汗は止まらない。白い服で来たのも失敗だったかと海は小さくため息をついた。汗で服が透けてしまっている。刀が気付かないと良いけど……。
「海？」
　刀の視線を感じて、ふっと視線を逸らす。
（……気づかれちゃったかな?）
「様子が変だけど大丈夫か？　日差しのせいで気持ち悪くなったか？」
　ぶんぶんと首を横に振る。カンづかれるのが一番マズイ。
「大丈夫ならいいんだけど、調子悪くなったら遠慮なく言えよ？」
　うん、と海は頷く。
「あっ持ってきたスポーツドリンク飲むか？　汗かいただろう？　服も汗で濡れて」
　ハッ、と口を噤む。見れば、海の服が透けているのが解った。
（透けてるな）
　いかんいかん、じっと見てたら海が不審がる。刀はスポーツドリンクを差し出したまま、顔をそむけた。
　そのときだった。
（え……あれ?　なんだか急に胸がすーすーして……）
　あったはずのそれがない事に気付いて海は目を白黒させた。
（ブ、ブラがない!?　な、なんで!?）
　理解が追い付かない。
　――もしかして神魂？　そういえば前にも同じことがあったような……。
（そのときはパンツだったけど……）
　海の目が泳ぐ。見ないで、見ないで……。
（ほら、海が挙動不審に！？）
　なんだなんだ、何が起きている！？　
（……あれ？　以前もこんな事があったような。えっ、また？）
　嘘だろ、一度ならず二度までも。今度は何が弾けたってんだ。刀はぐるぐると思いを巡らせる。
（あれ、何だろう胸の辺りに違和感が……）
　そっと、胸元へ手をやる。
「！？！？！？！？！？！？」
　――何で俺がブラ付けてんの？
　っていうか、これ誰の？
　どこから突っ込めばいいかわからない。刀は咄嗟に海の方を見た。すると、海は胸を隠すようにスケッチブックを抱きしめているではないか。
（か、刀、あんまりじっと見ないでよ……）
　顔を赤くしてスケッチブックを抱える海に、ピンと来てしまった。それってつまりそれはもしやいやもう絶対。
「えっ、そういう事！？」
「……」
「あー……海、スケッチはいいのか？」
　やはり、海は胸からスケッチブックを離さない。そのままスケッチブックに書く。
（うん、いいのいいの。続きは目的地に着いてからね）
　やりにくいことこの上ない筆談。
　――聞いた反応から間違いない。海はつまり……。
（なら意識しないように……）
　紳士だ、紳士であれ刀！　懸命に知らないふりを決め込む。それでも、吸引力の変わらないただひとつの胸元へ視線が行ってしまう。ああ男とは斯くも弱き生き物か。
（無理、視線がいくよ！　でも知らないふり！　視線がいくけど！）
　一生懸命、視線を逸らす。
（刀、気づいてる？）
「え？」
（気づいてるよね?）
　だってすごく私の胸、見てるもん。海の唇がそう動く。刀は顔を真っ赤にして俯いた。
（バレた！？）
　いや、わかりやすすぎるからね。
　――だが俺が着けてるブラは隠し通す！　そう心に誓った刀であったが、その刀のお胸を覆うブラも悲しいかな、シャツから透けて見えていたのであった。

　とんでもねーことしやがって。神魂のきまぐれとは、恐ろしい。真夏の悪夢であった。

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あとがき

担当マスター：寿ゆかり
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　のーぶらってつらいよな。

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