どうぶつライフ｜リアクション

どうぶつライフ

●再会

　八神修は自分の部屋で休日の朝を迎えた。大きく伸びをしようと腕を動かした時に違和感があった。そしてすぐに自分がベンガル猫になっていることに気づく。シルバー・タビーの毛色を眺めながら修は考える。

（また神魂か）

　実は修がこの猫になるのは初めてではない。過去の経験から長くて１日程度と類推した。ゆえに慌てることもなく、落ち着いて身支度を整える。

（そうだ、階下の皆に会いに行こう）

　皆、というのは修が飼っている犬猫たちだ。テオ似の子猫・テオテオや、長毛種の若猫・ロング。柴犬カーキー、シェパードのカール、ラブラドールのカエサルなど。たくさんの動物が修の家で生活している。
　階段を下りると、ちょうどご飯の真っ最中だった。そのなかにいる茶色に縞模様の猫――タイガが修に気づいた。

「お前……久しぶりだな」
「うん、しばらくぶりだね」

　皆の視線が集まるなか、修は一同に向けて『シュウ』と名乗った。簡単なあいさつを済ませると修もご飯を一緒に食べることに。
　以前に来たときのことや、今までどうしていたのかなど話題は尽きない。

「今まで居なかったのは何故だ」
「ちょっと外にね」

　外。
　この言葉に皆が強い関心を示した。普段この家で過ごしているから、外の世界に興味があるのだろう。
　特に猫は関心が強そうだ。修はこれには心当たりがあった。

（猫達も交代で連れ出してるけど、中々順番が回ってこないしね）
（犬達は毎日散歩に出てるから知ってることも多いかな）

　聞かれるままに色々な場所について話す。『野原』はバッタや蝶とも会えて、草花がたくさん。『天宵川』には川蟹や小魚たち、それに珍しい石。『海』という端が見えない塩の水が続いていて。『町』に人の群れと車が集っている。
　そんな風に外の世界を話していると、猫たちの目が輝いてくる。彼らの心にはいったいどんな景色が広がっているのだろうか。

（日を改めて連れていってやろう）

「ところでここでの暮らしはどうだい？」

　話の区切りがついたところで、修はそう問いかけた。飼い主としてはやはり気になるところ。思い切って尋ねてみたらこれといった不満はなく、快適に過ごせているようだ。
　その答えに安心するとともに、これからも心がけていこうと修は思った。ただ、１つ気になる言葉が出てきた。
　ご主人、つまり修ともっと一緒に過ごしたいという。しかし修は学生なので、学校に行っている時間が長い。

「あんまり家にいないから……」
「居ないときは学校に行ってるんだね」
「学校？」
「人間のお仕事だよ」
「お仕事かあ……」

（一応納得はしてくれたんだろうか……）

　とはいえ寂しいのは変わらない。彼らと関わる時間や密度を改めて考えようと修は思った。それから話したり遊んだりするうちに時間は過ぎて、気づけば日が暮れようとしていた。皆に別れを告げると自室に戻った。

　翌朝。
　修の予想通り、人の姿に戻っていた。階段を下りると犬猫たちがそわそわと落ち着きなく歩いている。

（ああ、シュウを探しているのか）

　その理由に見当がつくと、皆のところへ行って話しかける。

「シュウは、また旅行に行ったよ」

　修の言葉が伝わったのか、俯いたり、遠くを見つめている。

「きっとまた会えるさ」

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