星ヶ丘ＵＦＯ墜落事件｜リアクション

星ヶ丘ＵＦＯ墜落事件

その頃、美咲紀は厩舎で馬達を落ち着かせるために、撫でていた。
と、その時。
「はっ」
　鼻をつく焦げくさい臭い。
　美咲紀は慌てて入り口の戸を閉めた。それから換気扇を回し、馬達の元へ戻る。
「大丈夫なのです」
　と馬達に笑顔を向ける。そばにいる人間が落ち着けば、馬達も落ち着いてくれる。気持ちは伝染してしまうのだから。
　と、修からの着信が入った。
「もしもし、シュー君？」
「美咲紀か？　無事だな？」
　受話口の向こうから聞こえてくるのは得体の知れない鳴き声だった。鳥や獣とも違う。
「どうなったのですか！？」
「こっちは対処中だ！　馬達は大丈夫か？」
「煙が入ってきて……何かが燃えてるのです？」
「今、消えたところだ。また連絡する」
「了解なのです！」

　炎が消え、煙を上げ始めた。どうやら消火が済んだようだ。
「やったのです！」
　元の大きさに戻ったエロ、だが、
「危ないわっ」
　莉鳥が叫ぶと、エロの近くにモンスターのカギ爪が振り下ろされた。
「っ！　説得は諦めないのです」
　エロは一歩踏み出した。
「エロは敵ではないのですー。仲良くしましょうなのですー」
「そうね、説得を。……ねえ、あなた興奮しないでちょうだい」
　莉鳥も続いて一歩前へ。
　直接言葉はわかっていないようだが、モンスターは戸惑っている。
「おい、説得できるんじゃないか？　これ」
「ああ、反応してるな」
「エロに任せるのですー」
「何か策があるのね？」
　莉鳥の問いにエロは頷いて、戸惑っているモンスターへ歩み寄った。
　すでに敵意は大分和らいでる。
「地球の食べ物は食べられるのですー？」
エロはそう言って、笑顔を向けた。
「エロとデートしましょうなのですー」
　恐る恐る腕にぎゅっと抱きしめてみる。
「地球のスイーツはお口にあうのですー？」
　そんな様子を見ていた莉鳥は顎に手を当てた。
「そういう作戦は思いつかなかったわね」
「ま、まんざらでもなさそうだな」
「しかし、敵意は完全に消えた。これなら近づいても大丈夫だろう」
　修はそう言って、モンスターとエロの元へ。
「このモンスターさん、スイーツ好きみたいなのですー」
　エロはそう言って、持っていたおかしをモンスターへと渡す。
　心なしか喜んでいるようだ。
「そうか」
　修はその場で深呼吸をして、
「お前はどこから来たんだ？　どうして地球に？」
　そう問うた。
　するとモンスターはきょろきょろと辺りを見回した。それから腕を上げて、真っすぐに空を指した。
　その先にあるのは見え始めた星、赤い一番星だった。
「もしかして、火星？」
　莉鳥がポツリと呟いた。
「え、赤く見えるものなのか？」
　驚いて雅樹がそう聞いた。
「聞いたことがあるだけよ」
　火星人、の可能性があるのかもしれない。
「遠くから来たのですねー！」
「そうか。……これの修理が済んだら、元の場所へ帰ってくれ。人類は、君達を知っていい進化の段階にまだ達していないんだ」
　モンスターはしばらくここに集まった四人の顔を見回し、ゆっくりと頷いた。どうやら伝わったようだ。
　彼は背を向けて、球体の方へと歩いて行った。
　全員から安堵の息が漏れる。
「おーい、シュー君！」
　振り返ると、スマホを手に走って来る美咲紀の姿が。
「解決したのです？」
「ああ、なんとかな」
　この場に集まった五人はこの場で解散する流れになった。帰ると約束した彼を信じて。

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