ののこがすてんと転んだら｜リアクション

ののこがすてんと転んだら

　新田亮は九夜山でランニングをしていた。
「ん？」
　どこからか助けを呼ぶ声が聞こえる。
（この方角は……寝子島イリュージョンランドか？）
　廃園になった遊園地だから、普段人はいないはずなのだが。
　とにかく声のする方向へ向かう。
「たすけて！」
　子供が、瓦礫に埋まって動けなくなっていた。
　遊んでいるときに崩れてしまったのだろうか。
「今助けるぞ」
　亮ははやる気持ちを抑え状況を観察する。
　子供は元気そうだ。幸運にも瓦礫の隙間に挟まり、大きな怪我は無いのだろう。
　亮は空気を吸い、ろっこんを発動させて大きな瓦礫に手をかける。
（倍加！）
　力を６倍にすべく頭の中で唱えるが。
「ダメだ。進化能力でも瓦礫が持ち上がらない！」
　小さな瓦礫が少しずつ崩れ落ちる。このままだと瓦礫は子供を押しつぶしてしまうかもしれない。
　あと少しなのに。
　あたりを見回しても助けてくれそうな人影はない。
「くそ、ろっこんが暴走した時のような力があれば！」
（７倍！）
　亮が頭の中で唱えた途端、力が漲ってきた。
（これならいける！）
　瓦礫はみるみるうちに持ち上がり、子供は隙間から這い出して泣き出した。
「もう大丈夫だ」
　もっともっと強くなりたい、と願う亮だった。

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