ぼくのわたしの町たんけん！｜リアクション

ぼくのわたしの町たんけん！

「次は銭湯へ行くんだけど……」
　米屋を出た瀬莉たちは途方に暮れていた。
　どこからか現れた壁、壁、壁。分かれ道。
　道がすっかり迷路になってしまっている。
（ちゃんと着けるのかな）
　だが、下級生たちを心配させるわけにはいかない。
「大丈夫だからね」
　内心の不安を隠して笑顔を見せ、瀬莉は進んでいったが。
「あっ？！」
　足元がつるっと滑ったかと思うと、急斜面の滑り台に腰を落としてしまい。
　ばっひゅーん！　ジェットコースターのようなスピードで滑り降りていく！
「スピード違反です！　止まってください！」
　後ろから聞こえる声に振り向けば、なぜかおまわりさんの格好をした警察のマスコットが後を追いかけてくる。
「そ、そんなこと言われてもー！」
　散々な目にあったが、ようやく止まったところが銭湯の前だった。
「杜の湯だ！」
　飛び込んで後ろ手に戸を閉めると、マスコットはそれ以上追いかけてこなかった。

「あとはお風呂屋いってコーヒー牛乳ッス！」
　カプギアの情報を仕入れてほくほくの桐子も、杜の湯を探していた。
「お風呂ってことは今度はおりていけばいいッス！　直観的に！」
　気が付けばそこには川が流れていた。
「お、こんなところに川下りボートがッス！」
　迷わず乗り込んだ桐子たちは、急流を下っていく。
「ヒャッハー！　気持ちいいっス！」
　流れ着いたところでボートを降りると、目の前に杜の湯の看板。
「どうやら着いたっスね！」　

「よく来たね。今日はみんなにお風呂のお掃除を手伝ってもらいます」
　銭湯の主人が迎えてくれた。
「広い……！」
　星ヶ丘住まいの瀬莉は、珍しさに風呂場をきょろきょろしながら掃除を楽しんでいる。
「こういうのも楽しいッス！」
　桐子もズボンの裾を捲ってタイルの床にデッキブラシをかける。
「次は銭湯の裏側、ボイラーを見てもらいます」
「わあ……」
　パイプがごちゃごちゃ通っている様子に目を輝かせる瀬莉。
「熱いからここから先に近づかないように」
　銭湯のおじさんは言うが、その場所でも十分暑い。
　薪をくべると、赤い炎がゴオッ……と燃え盛った。
「うおおお、熱いっス！」
　ワクワクしながら桐子たちはボイラーを見学するのだった。
「さて、おつかれさま。手伝ってもらったお礼のコーヒー牛乳だよ」
「やったー！」
　腰に手をあて、ゴクゴクコーヒー牛乳を飲む桐子。
　ぷはー、と満足そうに息をつき、高速の速さで手を上げる。
「質問ッス！　いろんなぎゅーにゅーってどっから仕入れてるっスか？」　
「ああ、うちの牛乳は珍しい味が多いよね……近所の渡辺牛乳店から仕入れているんだ。試作品的にうちにおいて売れ行きを見たりしてるんだよ」
「なるほど！　ありがとうッス！」

　見学が終わると、いつのまにか道路は元に戻っていた。
　みんなは楽しい思い出を胸に学校へ帰っていくのだった。　

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