きょだいなおにぎりがあらわれた！｜リアクション

きょだいなおにぎりがあらわれた！

●立ちはだかるおにぎり

　伊藤佳奈は家の道場で剣術の稽古に励んでいた。稽古に一区切りついたところで、少し気分転換のために散歩へ出かけようと靴を履く。家の近くを歩くと初夏の風が優しく頬を撫でる。心地よさを楽しみながら歩き続けていると、いつの間にか知らない道へ来ていた。

「どこに続いているのかな～」

　佳奈は見知らぬ道で不安がることもなく、その道をさらに進んでいく。すると目の前に巨大なおにぎりが現れた。

「うわ～、こんなの見たことないよ～」

　その大きさに思わず驚く。しかし寝子島だと何が起こっても不思議じゃないかな、と妙に納得してしまう。そんなことを思っていたら、別の道から響蒼留人がやってきた。どうやら剣道の稽古へ行く途中にここへ繋がる道へ迷い込んだらしい。蒼留人も巨大なおにぎりに気づくと、佳奈と同じく驚いている。

「蒼留人君やっほー」
「伊藤先輩……なんですか、これ？」

　おにぎりを指差しながら佳奈に問いかける蒼留人。佳奈にも分からないので首をかしげるしかない。

（こんなもん食って大丈夫なのか？　だが先輩に毒見をさせるわけにはいかないな）

　蒼留人は持っていた剣道用品を置くと、恐る恐るおにぎりの一部を手に取り食べてみる。

（うまい。すじこだ！）

　口に含んだら米の美味しさと、すじこの旨みが広がった。噛むほどに味わいが増すのを感じる。しかし蒼留人はおにぎりを眺めながら、あることを考えていた。

「とりあえず毒はないようですが、量が多すぎますね」

　まるで壁のように目の前に聳え立つおにぎり。これをどうしようかと佳奈に話しかけると、彼女もおにぎりを食べ始めていた。体を動かしてちょうどお腹がすいていたから、これは丁度いいとばかりに。
　まずは手で一掴み。こちらの具材は鮭だった。

「やっぱりお握りの具と言えば鮭だよね！　うん、美味しい！　それに塩加減も丁度いいし、これは中々の職人の作品と見たね！」

　グルメ評論家ごっこをしつつもぱくぱく食べ進める。それを横目にしつつ、蒼留人はこの大きすぎるおにぎりをどける方法を考えていた。そして、ある方法を思いつく。
　蒼留人は竹刀にラップを巻くと、試合さながらの構えをとった。対峙するのはもちろん巨大おにぎり。

「ちょっとどいていてください」

　佳奈が移動したのを確認すると、おにぎり目掛けて竹刀を打ち込む。

「きええええー！」

　振り下ろした竹刀が米粒の壁とぶつかる。打ち込まれた部分は少しへこんだものの、竹刀の衝撃は米に吸収されてしまった。この光景を見て、蒼留人は食べる以外に方法がないと感じ、佳奈と一緒に食べ進めることにした。
　佳奈は最初の鮭から昆布、ツナマヨと続けて出てくるのを楽しんでいた。これだけ具を入れてよく味がまざらないな、と思わず感心してしまう。さらに鳥そぼろに明太子と、具の大盤振る舞いに終始にこにこしながら食べる。

「鮭もいいですよね。ツナマヨも……天むすはないですかね？」

　蒼留人も佳奈と話しながらおにぎりを口に運ぶ。
　味は抜群に旨いので、手を止めることなく食べ続けられる。

（ラップでたくさんのおにぎりを作って剣道部に持ち込むことにしよう。腹ペコの先輩たちがたくさんいるからな）

　そんなことを思いながら食べ続ける蒼留人。初めて見たときはその大きさに圧倒されたが、だんだん高さが減っていき、ついに食べきってしまった。

（大満足～。あ、でも太っちゃうかなぁ。これは帰ったらまた素振りかな。でもこういう美味しい不思議ならまたあってもいいかな？）
（女子の食欲もすごいんだな……うん、姉で知ってたけどあいつは体育会系じゃなかったし）

　おにぎりを食べ終えて、再び歩き始めた２人。するとだんだん見覚えのある景色が戻ってくる。そして別れの挨拶をすると、それぞれの目的地へ向かっていった。

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あとがき

担当マスター：星織遥
ファンレターはマスターページから！

この度は、シナリオへのご参加ありがとうございました！

皆さんの思い描く具材が本当にいろいろで
執筆中おにぎりが食べたくて仕方なかったです。
きょだいなおにぎり、目の前に現れたら私も食べてみたいです……！

改めて、この度はありがとうございました！

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