きょだいなおにぎりがあらわれた！｜リアクション

きょだいなおにぎりがあらわれた！

●高級具材を求めて

　とある休日。山田勘三郎が外を歩いていると、ふと空腹感を覚えて立ち止まる。時計をみると正午を少し過ぎたあたり。

「腹減ったからなんか買うか……」

　そう思ってふたたび歩き出す。しかし記憶にある店に向かっているはずが、だんだん知らない景色が増えていく。やがて路地に迷い込んでしまった勘三郎。不思議に思いながらもさらに進むと、そこにはおにぎりがあった。自分の身長よりも大きいおにぎりが。
　勘三郎は驚きつつも、目の前のおにぎりを興味津々に眺める。

「これ、好きに食っていいのか？　タダだよな？　後で請求書が来るとかそんなのはナシだぜ？」

　しばらく警戒しながら観察を続ける勘三郎。しかし海苔と白米のいい匂いに耐え切れず、手で掴み取って口に運ぶ。すると口の中でその美味しさが弾ける。勘三郎はすぐさまかぶりついて、掘り進むように食べ始める。どんどん食べていくと、具材がおにぎりのなかから現れた。塩昆布やオカカといった定番の具材が続く。

「おっと、今度は梅干が出てきたなぁ」

　美味しい。たしかに美味しいのだが、具材がどうも安いものばかり出てくる。

「うう……せっかくタダなんだから、うんと高級なやつ食いてぇなぁ。焼き肉とか、イクラとか……せめてツナマヨとかの高ぇの食いてぇぞ」

　勘三郎のなかでは、高級具材というと値段高めのコンビニおにぎりぐらいまでしか発想が届かないようだ。小さくため息を吐きたくなって、ふとある事が頭に浮かぶ。

「なんか真ん中辺りに高級な具がありそうな気がするぞ！　よし、食うぞ！　高級具材の発掘を目指せ！」

　根拠はまったく無いが、そんな気がしてくる。勘三郎の顔はすでに米粒だらけ。しかしそんなことはお構いなしに、さらに食らいつく。だが具材はやはり安いものばかり続く。とはいえ、おにぎりの壁は最初の大きさと比べると、だいぶ減ったように感じた。

「う～む。腹がいっぱいになってきてしまったなぁ。こうなったら、ろっこんで腹を減らしてでも、真ん中まで掘り進んでやる！」

　勘三郎は大声でカラスの鳴き真似をすると、ろっこん『腹ぺこガラス』を発動し嘴太鴉に変身した。すると急激に空腹感が訪れた。そしておにぎりの壁を掘り進める。豪快な食べっぷりで壁を切り崩していく。もはや最初の目的を見失っているが、どうやら気づいていないらしい。
　食べ続け、食べ続け、ついに最後の一口をぱくっと平らげた。

「は～、食った食った」

　勘三郎は満腹になり、とても満足した気持ちになってその場を後にした。

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