【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■待ち合わせ場所で
（由貴奈さんだ！）
　衛の視界に、愛しい恋人、由貴奈の姿が目に入る。
　仮面をつけていても、例え他に沢山人がいようとも。彼女の居る場所だけスポットライトが当たっているかのように、衛には由貴奈の姿がクッキリと見える。
（すっげー……由貴奈さん、めちゃめちゃキレイ）
　由貴奈も衛の姿に気付いたようで、真っ直ぐに衛へと進み寄った。
　いつも以上に艶やかに見える彼女のドレス姿に見惚れ、思わず足が止まってしまうも、衛は急いで由貴奈の元へと駆け寄った。
「うーちゃん見っけ。待たせたかなぁ」
　とんでもない！と衛はぶんぶんと頭を左右に振る。
　改めて正面から見た由貴奈は更に更に色気を増して見え。
　衛は開口一番に
「由貴奈さん、その格好、すっげーイイです」
　目を輝かせる衛に、由貴奈はゆるりと笑みを返した。
「ありがとう」
　うーちゃんも格好いい服になってるねぇ。いつものように、思ったままに伝えたい所だが、今日の由貴奈は言葉を飲みこんだ。
　今日は仮面舞踏会。いつもとは違う雰囲気で、いつもより言葉は少な目で。
「由貴奈さん。今日はずっと、由貴奈さんの時間、俺に独占させてください」
　あの日のように、衛は手を差し出す。
　その手に、由貴奈はクスリと笑みを浮かべた。
　『一曲だけ』という衛の言葉は結局『もう一曲』となり。
　ならばきっと、『今日は』の言葉は『これからずっと』になるだろう。
　そんな懐かしさと予感を胸に覚えながら、由貴奈は差し出された衛の手を取る。
（改まって言うとむずむずする……けど）
　でも、誰にも譲りたくないから。
　衛は背筋を正し、手袋に包まれた由貴奈の手をしっかりと握り。噴水広場までエスコートするのだった。

　噴水広場まで来れば
（……あ）
　由貴奈が驚きの表情を見せ、衛は思わず曲名を口に出した。
「……花のワルツだ」
　星ヶ丘寮の音楽楽団が奏でる優雅な演奏に合わせ、二人は手を取り向かいあう。
　衛は由貴奈の手を強く握り、そして背中に手を回した。
　あの頃のように遠慮なんかせず。自分の彼女となった由貴奈を独占する気持ちを込めて、衛は背中に回した手に少しだけ力を込めた。
（今日は仮面もあるし、それにいつもとだいぶ雰囲気が違うけれど……）
　いつものんびりまったりとした雰囲気を醸し出す由貴奈だが、今日は口数が少なく、淑女のようなしっとりとした雰囲気を見せている。
　それにならって、衛も出来るだけそんな淑女をエスコート出来るよう気合を入れた。
　二人は軽快にステップを踏みながら、前に踊った時よりも更に近い距離で花のワルツを楽しむ。
（……うん、大好きだ）
　衛は由貴奈の瞳を仮面越しにチラリと覗く。
　鮮やかな光を帯びた由貴奈の黒い瞳は、いつも以上にキラキラと輝いて見えて。
（まだまだドキドキすんのがしかたがねーっつうか）
　艶やかなドレス姿の由貴奈。
（由貴奈さんの新しい姿を見るたび）
　それは、容姿だけじゃない。
　突然降った雪のあの日。じっくりと交わした熱いキス。
　彼女から誘ったけれど、そんな彼女の頬が染まっていくのや、反応が愛しくて。
（きっと、一生ドキドキすんじゃねえかな）
　そんな衛の愛おしげな視線に気づき。いつもならゆるぅりと軽口でも叩きたい所を、由貴奈は我慢する。
「こうしてまた由貴奈さんと踊れて、幸せ」
　愛らしく微笑む衛の笑顔は、今日も眩しくて。
「……うちも、だよ」
　可愛い少年に見えていた衛だったが、こうして堂々と踊る姿は凛々しく、頼もしく見えて。
　由貴奈はその身体を衛に預け、そして耳元で囁いた。
「うーちゃん、よく似合ってるよ。格好いい」
　艶っぽく囁けば、衛の表情が瞬時に朱に染まる。
（ドレスを着る時はあんまりいい思い出が無かったけど、今日は違う）
　目の前の愛しい彼の姿。
　お互いの視線が絡み合えば、衛は由貴奈の瞳に自分の姿が映っているのに気づく。
　本当に独占している気持ちになれて、嬉しさがこみ上げ。
「あぁ、幸せだな」
　思わず呟いた衛の言葉に
「うちも幸せだよぉ、うーちゃん」

　満面の笑みを見せる由貴奈に、ダンス関係なく思いっきり抱きしめたい気持ちを堪える衛だった。