滝に打たれて　～日帰り体験ツアー～｜リアクション

滝に打たれて　～日帰り体験ツアー～

■バスの光景　２
「……ったく。なんでわざわざクッソ冷てぇ水に打たれなきゃなんねぇんだか……」
　如月庚が吐き捨てるように呟けば、その隣の席で屋敷野梢が小首を傾げた。
「なんか急に滝行したくなったんですよねー。……これはあれですよ」
「あぁ？」
　気だるげな庚に向かい、梢は胸を張る。
「絶対、神魂のナニカですよね。胸が騒いでいるのですよー。由々しき事態です」
　瞳を輝かせる梢に対し、ハイハイソウデスヨネー、と気のない返事の庚。
　ウッキウキと滝行ツアーパンフを開く梢に「見ますー？」とパンフを広げられるも、俺はいい、とばりに手で避ける庚。
　だが、そんな庚の胸の内は
（……なぜか、無性に滝に打たれたくなってんのは……ろっこんも精神に寄る所が強いから、か）　
　神魂の影響も受けつつ、おひとよしな一面を持つ庚。無論、梢の滝行への誘いを無下に出来ないわけで。

　そんな二人の後ろでは、熱い漢たちの想いがぶつかり合っていた。
「何故滝行をするのか……それはそこに滝があるから！」
　志波武道の伊達眼鏡が光を受けキラリと輝き。
「俺は…この滝行で一皮剥けるぜ！」
　冴木竜司が白い歯をキラリと輝かせた。
　この二人が揃った時点で、もう既にアレな予感しかしないのは私だけじゃないはずだ。
「ちょうど精神修行出来る場所を探してたんだが、これは渡りに船って奴だな！」
　陸上部所属の竜司。陸上部は体力は勿論のこと、己の肉体をコントロールする精神力も多大に必要とする競技であり。今回の滝行は願ってもないチャンス！と気合を入れていた。
「でも、滝行ぐらいじゃロリコンは直らないと思うよ！」
「別に直したいなんて微塵も思ってねーし！」
　武道の言葉に即答する幼女愛好家、竜司。
「志波だって筋金入りのブラコンじゃねーか」
　竜司が持参した素敵お菓子『ニャルキー』を武道に手渡せば、武道も受け取りながら
「俺だって別に直したいなんて思わないし！」
　ニャルキーを頬張る武道。
（日頃の色々な悩み過ぎを少しはすっきりできればいいな、と思ったけど……）
「ひょー！旅鴉もいんじゃん！今日もナイスロリ！」
「騒ぐとバスガイドが起きる」
　スケッチの手を止め月詠が竜司に視線を送れば。竜司は月詠にニャルキーを投げ渡す。
「ってかバスガイドの婆さん、なんで寝てんだよ。仕事放棄じゃん」
「この人も元・幼女だぞ」
「無理！そんな時期ないよ絶対その婆さんは！」
「……飯はまだかいのぉ」
（……うん！カオスの気配しかしない☆）
　爽やかな笑みと共に、周りの状況に早々と本日のカオスっぷりを察する武道だった。　

　こうして、賑やかなまま一同は滝へと到着した次第。

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