イースター・イースター｜リアクション

イースター・イースター

「……おや、可愛らしいお店ですね」

　流がその場を去った後に現れたのは、スーツを身に纏った男、アケーチ・タッマーキ。チラシを受け取った彼は、そこに描かれている店内の様子と可愛らしいウサギの絵、そして従業員の頭にあるウサミミに目を奪われた。

　――うさみみを付ければ更にうさたんと心を通わせられる気がしますよね。
　ふふ、ふふ。妖しく笑うアケーチ。自宅で待っている桃の毛並みを持った兎、うさたんを思いまた笑った。

「明智珠樹と申します。精一杯頑張りますのでよろしくお願いいたします」

　数日後、《Délicieux!》の店内にアケーチが立つ。すらりとした長身の頂点には、可愛らしいうさみみが存在を主張していた。礼儀正しい態度に、爽やかな微笑。自慢のプリ尻にはふわふわと柔らかそうに作られた尻尾が生えている。

「似合うでしょうか……？」

　一通りの説明が終わると、アケーチの隣に立っていた少女、御巫時子ははにかんだ笑顔をアケーチに向けた。その頭にも可愛らしいうさみみがぴょこりと生えている。片耳の垂れたそれにはリボンが結ばれており、制服とも合っていた。

「もちろんですとも！　似合ってますよ」

　純粋なアケーチの言葉に時子はふわりと、今度は柔らかい笑顔を浮かべる。それは慌ただしい店内の清涼剤のようであった。準備を手伝う二人であったが、店長の呼び声に手を止める。

「緊張、しますね……」

　時子は準備の終わった店内をぐるりと見まわした。華やかに飾られた店内は、客だけなく店員である時子の目も楽しませるものである。慣れれば大丈夫という先輩店員の言葉に頷きながら、お客様に楽しんでもらえるように頑張ろう。そう思い時子は気を引き締める。
　ちょうどその時、ちりんちりんと、ベルが鳴った。ドアに付けられた、客の来訪を告げるその音に店員の視線が向けられる。

「いらっしゃいませ！」

　応対に出た時子の声と微笑が、来訪者を迎えた。
　《Délicieux!》、開店である。

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