イースター・イースター｜リアクション

イースター・イースター

「店長！　俺上がったら食べてくんで、あっちの角の席の人と俺の会計一緒にして先に払ってもいいですか！？」

　嬉しさで今にも遥か高くまでジャンプしてしまいそうな、はたまた花をぱっと舞わせそうな、そのくらいの勢いで衛は店長に言った。ちょっとだけ格好つけたくなった衛は、さっと会計を済ませる。店長は衛の顔と、先程の客とのやり取りを見て何かを察したのか、ぐっとサムズアップ。キラリと歯を見せて言った。

「おう！　頑張りな！」
「ありがとうございます！！」

「あっ、うーちゃん戻ってきた」

　そうして仕事を終え、着替えた衛はそわそわと落ち着かない様子で由貴奈のもとへと向かった。由貴奈のテーブルにはもう彼女の注文したエッグタルトやイースターエッグが並んでおり、華やかなものになっていた。卯木の注文分も届き、二人の時間が始まる。

「ふふー、今日はいちゃいちゃできなさそうだなーと思ったけど、そうでもなかったみたいだねぇ」

　にこにことしている由貴奈に、衛は仕事の疲れを癒されながら、二人は他愛のない、でも二人にとっては大切な時間を過ごした。日常のこまごまとした話や、ここでの働きぶりなどの雑談を続ける。ある程度話し終えたところで、由貴奈はケーキの一欠けらをフォークに刺し、衛へ差し出した。

「ゆ、由貴奈さん！？」
「はい、あーん」

　衛にうさみみが生えていれば、今この時ぴんっと張っていただろう。まごまごしながら、衛は少し照れくさそうに口を開いてそれを受け入れた。そんな出来事も交えつつ、二人はタルトやケーキを楽しんで、甘い夢に溺れた。

「あれ？　もう会計済んじゃってるの？」

　席を立つ前、そのことに気付いた由貴奈は、しっぽがあればぱたぱたと振っていそうな衛を見てふわりと笑った。

「そっか、ありがとねぇ」

　衛としては、由貴奈に喜んでもらえるだけでもう嬉しくて仕方がない。しかし、続く由貴奈ののんびりとした言葉に慌てることになる。

「でも毎度払ってもらうのは悪いから、たまにで大丈夫だよぉ」
「そ、そんな！　気にしないでくださ……」

　言いかけた衛の唇に、由貴奈がそっと指を添えた。

「バイト代、デートだけに使うわけじゃないでしょ？」

　――やっぱり、由貴奈さんにはかなわないな
　衛はそう思いながら、こくりと頷いた。

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