【ホワイトデー】学生達のWhite Day!｜リアクション

【ホワイトデー】学生達のWhite Day!

「Happy Happy White day ～♪」

　１３日の金曜日。キリスト教徒ではなくてもあの白いマスクとぽっかり空いた黒い目元が脳裏に軽くかすむ日であるが、そんな日の夜に、トワ・E・ライトフェロゥは鼻歌を歌いながら、ご機嫌で大きめの箱に何かを詰めていた。

　リビングのテーブルには包装された大量の猫の形をしたクッキー。黒と白の可愛らしい猫達が、透明なセロファンの中からリビングの天井をつぶらな瞳で見つめている。それらをせっせとトワは箱に詰めているのだが、同じ様な大きさの箱がまだ幾つも空のまま床に転がっていた。
　そんな彼女の作業風景をうんざりしながら眺めている人物がいた。

「……おい、その箱の中身は俺が配るのか？」
　それは、トワと同居している夜海霧楓だ。答えは分かっていても、彼は訊かずにはいられなかった。トワが箱から顔を上げ、きょとんとしながらパチパチとその可愛らしい青い瞳を瞬かせた。
「そう言うデシタケド？　カエデはー、高校で配るマス。もう忘れるマシタ？　カーエーデー、老化ゲンショー？」
「分かってて訊いたんだよ……」
　楓はげんなりと肩を落とす。明日はホワイトデー。トワはたくさんの知人に、用意したクッキーを渡そうというのだ。寝子高生は楓に任せ、午前中は小学校で友達に、学校が終わればそれ以外の人達にも全員配り歩こうとトワは考えていた。
　楓はこの３歩歩けば知り合いを作ってくるお姫様の能力に、改めて内心で舌を巻きながら言った。
「第一こんな配ってどうすんだよ。そもそもホワイトデーって男がお返しするんじゃねぇのか？」
　楓の言葉に、トワは不思議そうな顔をしながら頬に指を当て答えた。
「トワはー本当はー貰う側なんでしょうケドー。Event が他の人次第になるデスカラー、ならトワが用意すればいいデス」
　そしてクッキーを詰め終わった箱を、ずりずりと楓の足元に引きずってくる。そして楓に向かいにっこり笑った。
「コレガー、高校の分デス。カエデも White day 楽しめばいいデス！」
「楽しめばいいったってなぁ……」
　箱の中から黒と白の猫達がじっと楓を見つめてくる。楓は今日の夢で、この猫達が「配れ～配れ～」と言いながら追いかけて来ない事を祈った。

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