【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞

●猫鳴館にて

　桜花寮から猫鳴館に目を移そう。
　猫鳴館の人々は桜花寮に比べてうるさかった。
　赤点を取った者は阿鼻叫喚で走り回り、思ったより良かった者は祝い酒ならぬ祝い鍋だと言わんばかりに台所に集まって、あれやこれや食材を鍋にぶち込んでいる。
　そんな中、せんべい布団に頭を突っ込み落ち込んでいる一人の少女がいた。
　彼女の名は伊賀解理。スパッツと眼鏡と白衣を装着した理系女子だ。
「いやぁ、改めて見るとなかなかひどい」
　解理は試験結果の用紙を薄眼で見る。
「多分寝子島に来て受けたテストの中で一番低いんじゃないだろうか」
　思えば最近勉強が疎かになっていたと反省する。
　それもこれも、憧れていた先輩、北風貴子が卒業してしまうからである。３年生を送る会からこちら、何をやるにも気力が湧いてこなくて授業も上の空だった。
「おかげで最近は無駄な苦労を負う羽目になる事も少なくなかったなぁ……」
　さらにだ。『彼』ともテスト期間だからと会える時間があまり取れなかった。
　言ってみればダメージ倍だ。
「はぁ……これがなんたらロスってやつか。この場合名付けるとしたら『いいんちょ＆彼ロス』だな、うん」
　猫鳴館の、古びて顏みたいなシミの浮かぶ天井を見上げる。
　お化けじみたそのシミが、貴子と『彼』の顔に代わる代わる変化して見える。
　重症だ。

　十分ほど布団に突っ伏していただろうか。
　突如、解理はバネ仕掛けの玩具みたいに跳ね起きた。
「……さて、愚痴兼言い訳はこのぐらいにして勉強しよう」
　正直まだ引きずってる感はあるけれど、これが続くようなら本当にやばい。
　なにより、よく見れば解けるような問題を間違えている。
　気力が湧かなかったからと言って、こんな間違い方をするなんて。
　解理は自分自身に腹を立てた。
「……僕の不甲斐なさを大切な二人のせいみたいにしてたら顔向けできなくなってしまう」
　問題集を開く。試験前のように、いや、それ以上に猛然と問題と向かい合う。
（……でも、ある程度勉強し終わったら、二人に連絡とったり会いに行こうかな）
　なんだかんだ言ってもあの二人に会いたいのは事実。
　リベンジするために二人から力を貰わねば！　なのだ。

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