夢世界とチョコの妖精｜リアクション

夢世界とチョコの妖精

「おおー、必死だなぁ。早い早い」
「鬼さんこちら、手のなる方へー」
　すっかり息切れしているまもるを相手にクロは完全に油断していた。
「見せてやるぜ。俺の本気……スパイダースバイダー！」
　まもるはクロの進行方向へと狙いを定めると手から蜘蛛糸を発射した。
　クロは反射的に回避したがまもるは次々に蜘蛛糸を発射しクロの行く手を塞いでいく。
「はいそこ、そっちもアウトー！」
「ちょっと、そんなの卑怯よ！」
　クロも毬栗で反撃するが蜘蛛糸に絡みとられまもるには当たらない。
「も、もう逃げ場がない……」
　追い詰められたクロにじりじりと躙り寄るまもる。
　目を閉じ身構えたクロをまもるの手が優しく包み込んだ。
「つかまえた。はは、やっぱチョコみたいなにおいだなポニテ」
「かぐなー！」
　必死に逃げようとするクロを抱えまもるも泉へと向かうのだった。

「どうやらクロも捕まったみたいだな」
　先に泉に着いていた修と葉月はシロが魔法で出したテーブルと椅子を並べお茶会の準備をしていた。
「クロも捕まっちゃったんだ……」
「まさかこんな変態に捕まるなんてね」
　睨むクロにまもるは笑いながら。
「心配するな先刻のは冗談だよ」
　そう言うとまもるも後から出された椅子に座りクロにチョコドリンクを注文した。
「まったくもう……」
　クロは渋々とチョコとミルクの特製ドリンクをまもるのカップに注いだ。
「君のチョコポニテに乾杯」
　修はホットチョコとチョコケーキを、葉月はチョコパフェを出してもらい三人は美味しいスイーツを楽しんだ。
「甘い物は良いね。気持ちが暖かくなる。そういえばクロとシロには名乗ってなかったね。俺は八神修だ」
「三宅葉月よ。よろしくねシロ、クロ」
「オレは鎌八まもるだ。二人も美術室に飾られていた絵を見たんだろう？」
　首を傾げるクロとシロにまもるは絵のことを説明した。
「ふぅん。絵のことは知らないけどここには何度かあんた達みたいに人が迷い込んできたことならあるわよ」
「それでその人達はどうなったの？」
「チョコを食べたら皆消えちゃったの……」
「ということはそろそろお別れかな」
　修の言葉通りチョコを食べ終えた途端三人の体が眩く光始めた。
「ポニテたんともお別れかぁ……」
「アタシは嬉しいけどね」
　素っ気ないクロの態度に落ち込むまもるを見てクロは呆れたように溜息をつき。
「まあ、アタシもちょっとは楽しかったわ。あんたとの追いかけっこ」
　途端に笑顔になるまもるにクロも少し照れくさそうに微笑んだ。
「シロもクロもお元気で、森の小動物たちによろしく」
「素敵な世界ね。私も楽しかったわ」
「色々びっくりしたけど、皆に会えて良かった、と思う……」
　葉月と修がシロに別れの挨拶を済ませると三人の視界は光に包まれ、目が覚めると見慣れた部屋のベッドの上に戻っていた。
「不思議な夢……」
　それが本当にただの夢だったのか葉月には分からなかった。
　けれどまたいつかあの世界に行けたら今度はもっと色々お話をしてみよう、そう葉月は思うのであった。

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