カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！｜リアクション

カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！

「強すぎて書けない」

　ゲーム史に残る、伝説の名ＲＰＧ。
　神話の生物にステータスを与えるとき、スタッフは数字の代わりに、こう一行記した。
　
　数字での表現を拒否する、問答無用の存在……。
　
　――咆哮が世界を震わす！
　――羽搏きが、尾の唸りが、山を抉り、天を劈く！
　
　翼竜の王、顕現。

　轟音のブレスが山を削り、羽搏きのソニックブームが城壁を撥ね飛ばす。
　
　ひらり頭上に飛び乗り、五郎八は悠然と刀、信彦を見据える。

「『大器晩成』効果で、粉砕！　玉砕！　大喝采！」

　カードゲームに通暁する五郎八、今回は徹底的にロマンを追いかけてみた。
　彼女の想定しうる、最強にして至高のパワーデッキ。
　しかも強化も十分。
　望むべく最良の状態での、最悪のクリーチャーの召喚。
　歌留多同好会の二人により、それは達成されたのだ！

　単なる『龍』というカテゴリーを越えた、力の概念の発現。
　咆哮を上げて、刀、円、信彦に迫る！

　刀は円を見る。すでに自分は、龍を失ってしまった。
　円は黙ってうなずく。まだ当方に策あり。
　
　まだ勝機はある。
　レディーに不屈の信彦、ここでも折れぬ。
　四十八手、あらゆる手段を使い切る。

「『馬の耳に念仏』！」
　信彦が札を発動。馬と言っても、この場合はＵＭＡ（Underdefined Mysterious Animal:未確認生物）。
　存在しない生き物に仏性を芽生えさせ、戦意を喪失させる……。

　わずかでも時間が稼げれば……。
　だが、そうは問屋が卸さない。
　再び戦線に舞い戻ったリーサルウェポン、小萩が突撃を開始する。

「小萩の『き』。槿花一日の栄」
　女性の美しさ、儚さを花にたとえ、一時的なステータスアップを図る。
　人の世に咲く花を集めた小萩、最後は自らを咲かせる。
　咲いて散る花として、戦線に復帰した小萩、限界のラッシュをかける。

　信彦、これに応えて『出る杭は打たれる』。
　小萩の能力を自分のものと揃える。
　傍らでドレイクザドレイクを見遣ると、やはり、あの程度の足止めでは、効果は一瞬。

　ならば、こちらも手段は択ばない。
　あらゆる手を使うのは、レディーへのアピールも同じ。

　札の下から現れるのは、もはやカルタではない。

　――クレジットカード！
　それも黒いやつ！

　突進するドレイクザドレイクに、垂涎の的、無制限のカードを投げつける！
　ガッ！　電光が迸り、龍王の突進が押しとどめられる！
　王であれば、散財は当たり前。浪費によって国を傾けた王は枚挙にいとまがない。
　圧倒的速度で、クレジットカードの数字が膨れ上がっていく！
　地方自治体の予算、国家予算、向こう数年分の国民総生産……。
　黒のカードが撓み、限界のないはずのカードが大きく歪む。
　発動！　蓄積されてダメージが、月末に反射！

　だが――それでも龍王、少しも動じない。

「王ならば、この程度のことは常識！」
　敢然と言い放つ五郎八。
「なるほど――当然か。『王』ならば」

　信彦がニヤリと笑い、一枚の札を取り出す。
　薄汚れた羊皮紙。
　
　先ほどのクレジットカード、足止めは真の目的ではなかった。
　相手が『王』であることの証明――それだけが欲しかった。

　これこそは、信彦の究極の一手。
　歴史に名高い、王を束縛するカルタ。

――マグナカルタ！