カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！｜リアクション

カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！

　戸惑い気味の紫、都に促され、札を読みあげる。

『猫の手も借りたい』
　効果：猫の召喚

　うむと頷き、都は自分の札を取り出す。
「カードゲームなんて、初手と引きの強さの運ゲーだと思うし」
　彼女の呟き、真の意味を知った人間は、何人いただろうか。

『好機逃すべからず』
　効果：自身のチャンスを、逃すことなく有効に活用できる。

　それと同時に、都のろっこん『シアワセウサギ』が発動する。
　修とバトルできる幸運。
　紫とタッグを組める幸運。
　さらにさっそく、『幸運』に関する札が引けた、という幸運。

　どれも、彼女にとっては得難い幸運である。

　幸運事が、三つ重なった時に自動発動する彼女のろっこん。
『好機逃すべからず』の支援もあったのか、ともかく発動条件が満たされる。

　瞬間、紫の召喚した猫が、幸運の光に包まれる！
　跳ね上がった猫が「偶然にも」天女を飛び越え、「偶然にも」修に向けて効果的な一撃を与えた。

「幸運上昇デッキ……！」
　いかなるゲームにせよ、運がそこに介在するなら、幸運なものが勝利する。
　圧倒的に幸運であるなら、いかなる技術を吹き飛ばして、勝利することができる。
　ある意味、無敵のデッキである。

　だが、都は単なる戦略でそれを選んだわけではなかった。
　いつでも黒のパーカーを手放さない、かたくな前髪を下し続ける。
　それは、美学、こだわりと言えるかもしえれない。
「めんどくさいから」と、彼女に言わせればそうなるだろう。
　浮き上がってもやり方を変えぬのは、彼女の誇り高さだ。
　
　周囲を幸せにするろっこんは、それを生かしたデッキは、彼女自身の表現と言ってもいいだろう。

　――そんなことはない。最近ろっこん使ってないのを思い出して……。

　彼女に言わせれば、ま、そんなところだろうが。

　ただ、幸運に頼る。
　すべての勝利条件を潰されても、奇跡の幸運が、彼女の掌に勝利を落とし込むのを待つ。
　無気力、無関心な外面とは裏腹に、たやすく己を枉げることをしない都らしいデッキだった。

「幸運を上昇させる」という、問答無用の効果があれば、ある程度のカルタなら強化可能。
　真摯に工夫されたカルタならなおさら。

　修は笑い、次なる歌を取り出す。

　――我が袖は　潮干に見えぬ　沖の石の　人こそ知らね　乾く間もなし

「『千載集』、二条院讃岐」

　恋しい人を思う気持ちを、沖の石に例えた、雅心溢れる句である。
　効果：回復の泉による回復。

「ライフゲイン」
　真白が声を上げる。
「シブイデッキを持ってきたね！」

　とかくカードゲームにおいては、相手を速攻で「打ち倒す」ことが求められる。
　だが、勝ちの手段はそれだけではない。

　莫大なライフの保有。
　カードアドバンテージ。
　キイカードの除去手段。
　これらがそろえられれば、敗北条件がなくなる。
　理論上「負けることができなくなる」のだ。
　
　敗北が不可能なデッキ――。

「回復が多いのは、恋の歌が多くなったからだろう」
　当の修は、計算など知らぬ風情で、謎めいた笑いを浮かべる。
「百人一首には、恋の歌が多いからな」