【球技大会】普通のサッカー（白猫組サイド） -後半-｜リアクション

【球技大会】普通のサッカー（白猫組サイド） -後半-

【後半２　～もはや、精神論でしかないのか？～】

　フィールドに緊張が走る中、白猫組のキックオフで試合が始まった。
「ま、臨機応変に行こうじゃないか」
「まゆ先生が見ているんだ！！！　うぉぉぉぉぉおおお！」
　信彦と竜司がパスを出し合い、攻めかかる。
「ボールを奪ったら反撃よ！」
「絶対に……負け、ない」
　蛇那伊と拓郎が早速ガードしにかかるが……。
「まずは、パスだね！」
　信彦がいったんボールを後ろに下げる。
「引っかき回すよ！」
　それを円が受け取る。
　そのままドリブルで黒猫組の陣地へと切り込む。
「……さすがに早いな」
　シグレが併走して、妨害にかかる。
「んー邪魔かなー」
「そう思ってもらえて光栄だね」
　円がそのまま抜けようとしても、シグレがその進路を遮る。
「仕方ないねー」
　そう言ってパスを出す円。
　庚がボールを受け取る。
「走り抜ければいいんだろう？　なら……」
　庚は瞬間的に周囲の情報を把握すると、ドリブルを始める。
「させないよ」
「甘ぇ！」
　すぐに天野が遮ろうとするが、それは届かない。
「早いぞ！」
　天野が黒猫組のDFの方を見やるとそう叫んだ。
「突破された！」
　英二が驚いたように叫ぶ。
　自身はサッカー部の耀をマークしに行っていたため後手に回った。
「おっと、そのマークも抜けられるぜ？」
　しかし英二は耀にマークを振りほどかれる。
「……ふん」
　後方の白猫組が黒猫組を突破し始めた頃、庚は黒猫組のDF陣との勝負へ入っていた。
　実質４と１のその対決に、雰囲気は一気に引き締まる。
「借りを返してやる」
　そうつぶやきつつ、庚はドリブルを続ける。
　ラッセル、いいな、銀次郎、黒子の４人は、すかさず囲むように包囲網を狭める。
「一人で来るなんて、上等じゃねぇか！」
　ラッセルはそう言うと、庚のボールを奪いにかかるが……。
「そいつはフェイントだ」
　見よう見まねのフェイントだったが、それでも十分な効果を発揮した。
「ここまで来たら、勝つ！」
　黒猫組は体力的に劣ることを黒子は知っていたが、一生懸命な奴等ばっかりだから勝てる！　そう信じて怪我を押して出たという。
　しかし、思いと結果が通じるのはある意味最高の幸運である。
「ちっ」
　庚は迷った。
　ゴールはすでに射程圏内だが、このままだとはじかれるかDFにカットされる……その可能性が高い。
「打て！」
　そのとき、後ろから聞こえた声に弾かれるように庚はシュートを放った。
「キーパー！　止めるのじゃ－－－－！」
　いいなの祈りを込めた声が響く。
　が、しかし……。
　ガィン！
　ボールはゴールポストの上に当たって跳ね返った。
「ボールはまだ生きてるよ！」
　まもるの声が飛ぶ。
　安堵の表情を浮かべていた修だったか、その瞬間、割り込んできた影があった。
「女子はこういうとき得でいい……」
　するすると上がっていた解理がそのままゴールに向けてボールを蹴る。
　先ほどの庚への声もどうやら解理の声だったようだ。
「絶対に入れさせねぇぞ！」
　銀次郎がヘディングでボールを弾く。
「よし、カットを……」
　そういっていいながボールを蹴り出そうとした瞬間。
「言ったろう、借りは返すって……な！」
「やられたのじゃっ！」
　そう言って、思いっきりシュートを放つ庚。
「無理か……」
　仄がそう言ってつぶやくとともにボールはゴールの中へとたたき込まれた。
　ピィィィィィッ！
「白猫組１点、合計２点！」
　相原先生がそう告げる。
「これで白猫組が２点……黒猫組が３点か……」
　仄は監督として先を予測しようとしたが……、それすら難しくなってきた。
　もはや精神論の世界へ突入しつつあるサッカーは、終わりに向かいつつある。

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