モデル体験撮影会｜リアクション

モデル体験撮影会

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　時折肌に突き刺さる寒さの風が通るこの日。
　スタジオ内で季節違いの姿をした女性が腰に片手をおいて寝子島ラムネを飲んでいた。

「お、いいですね。どうです監督？」
「いちいち確認を取るな、お前が良いと思った物を俺に見せろ。モデルにも失礼だ」

　モデルは古本屋の看板娘もしているらしい、水樹だ。
　撮った成果を目の前で確認されるのはよくある事だが、撮る度に確認をするのは新人故なのかもしれない。
　それを諌められている姿を見ながら、新人時代を思い出していた。

「緊張してるんですか？　私も新人だった頃は皆さんと同じでガッチガチだったんですよー」
「…え？　そうだったんですか？」

　凍りかけていた現場の雰囲気に水樹は自分の失敗談を披露する。
　大事なロゴを手で隠してしまったり、シャッターと同時に目を瞑ってしまったり。
　時に、思わぬトラブルで待ち合わせ時間に遅れてきたこともあった。

　そんな話を和やかにするものだから、新人カメラマンたちはつられて和やかな雰囲気になる。
　監督はそれを静観するだけだが、サングラスの下の眼は常に人を捕らえていた。
　雰囲気をそのままに撮影を再開する一同。

　扇風機で風を作り、麦わら帽子のリボンと水樹の長髪が流れる姿。
　ベンチに座りゆっくり団扇を顔に仰いで、隣にラムネを置く姿。
　カメラマンに要求されたり、水樹自身が提案したりして様々な姿を撮影する。

「これとかどうですかね。あー…ちょっとぶれちゃってますか」
「私と寝子島ラムネもぶれてしまってるので厳しいかもしれませんね」

　普段はある程度お任せではある写真チェックにも水樹は参加した。
　カメラマン、水樹、ディレクターの三人でチェックをしたが、今ひとつ良い感触が掴めないようだ。
　どうしようか、と唸っていた所に猫の鳴き声がスタジオから聞こえた。
　スタジオの入り口で毛づくろいをしていた猫…タルトがいた。

　水樹達が視線で会話をし、猫と撮影をしようと無言の中で頷きあう。
　水樹が近づいてタルトと目が合い、タルトの一鳴きと水樹の笑顔で何かが通じ合ったようだ。
　水樹とタルトは一緒にスタンバイをする。

「じゃあ、ベンチでのんびりしてみましょうかー」
「えぇ、改めてよろしくお願いしますね。君もよろしくね？」

　カメラマンの指示に水樹も応じ、猫も理解したかのようにベンチに飛び乗る。
　水樹が寝子島ラムネを飲む横で私も欲しい！と言っているかのようにタルトが手を伸ばす。
　それを見た水樹はタルトと顔を近づけ、ウィンクをする。

「お…うん、良いですね、その表情」

　カメラマンの快諾を得て午前の撮影が終わった水樹。
　水樹は猫であるタルトを持ち上げ、外でスタッフが用意したミルクを飲む一人と一匹であった。

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